理化学研究所の種石慶氏(融合研究推進グループ 健康羅針盤チーム テクニカルスタッフI)は2017年12月5日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開かれたインテルの記者発表会で、「AI創薬にかかる期待」と題した講演を行った。

理化学研究所の種石慶氏
理化学研究所の種石慶氏
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 講演で種石氏は、疾患の原因となるタンパク質を同定するためのゲノム解析に、人工知能(AI)に関する技術であるディープラーニング(深層学習)を本格適用することを明らかにした。種石氏が所属する理化学研究所と京都大学、製薬やヘルスケアなどの分野に応用できるAIやビッグデータ技術の開発を目的とする団体「ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)」が、2018年3月に開始する予定という。LINCには製薬会社やヘルスケア企業などが参加するほか、京都大学と理化学研究所もメンバーに名を連ねる。

 種石氏によると製薬業界は創薬の研究開発費用の上昇が大きな課題になっている。研究開発費は年々上昇傾向にあり、開発期間も10年以上と長期化している。一方で承認を受けた新薬の数はほぼ横ばいという。承認された新薬1件当たりの開発費用は2008年時点で1200億円に達し、その後も同様の傾向にある。

 原因の1つとして、創薬テーマの設定が難しくなっていると種石氏は指摘する。「テーマを決めるには、まず疾患の原因となるタンパク質の組み合わせを同定する必要がある。しかし今や同定が難しいものばかりになっている」(種石氏)。ゲノム解析にディープラーニングを応用することによって、タンパク質を同定する時間の短縮を期待しているという。