KDDIは2017年11月29日、同社が提唱する「スマートドローン構想」実現に向け、気象情報提供のウェザーニューズと業務提携したと発表した。記者説明会でKDDI 執行役員常務 山本泰英氏は「ドローンに4Gや5Gの通信機能を持たせて、より高度な用途でのドローン活用を目指して取り組んできた」と説明。天候や気象状況に左右されやすいドローンの長距離自律飛行に、ウェザーニューズが保有する詳細な気象情報や気象予測の技術の活用が必要となると判断し、業務提携に踏み切った形だ。

「スマートドローン構想」を説明するKDDI 執行役員常務の山本泰英氏(撮影:川本鉄馬、以下同じ)
「スマートドローン構想」を説明するKDDI 執行役員常務の山本泰英氏(撮影:川本鉄馬、以下同じ)
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 KDDIとウェザーニューズはこれまで、全国に約3000カ所ある携帯電話基地局に気象観測センサーを設置し、「ソラテナ」という気象サービスを提供している。今回の業務提携により、基地局で得られた詳細な気象データをドローンの運行に活用する計画だ。

全国3000カ所の基地局を「ドローンポート」に

 山本氏は今後の展開として、KDDIが全国の10カ所に設置している携帯電話の「ネットワークセンター」を「ドローンステーション」に、さらに約3000カ所の基地局を「ドローンポート」とする構想を語った。ドローンステーションは、ドローンの駐機や充電、点検と整備、セッティング、遠隔監視に使う。ドローンポートは駐機と充電に利用する。これによって全国をカバーするスマートドローンの利用環境が整い、自律飛行による測量、配送、点検、警備などが期待できるという。

 発表会では、新潟県長岡市山古志で行われた実証実験も紹介された。山古志は、錦鯉発祥の地として知られる。しかし、山肌に沿うように設けられた棚池は、管理や保守に手間がかかる。美しい錦鯉の育成に欠かせない定期的な薬剤散布や寄生虫への対策は、生産者の大きな負担となっているという。

 実証実験は、棚池から離れたドローンステーションから離陸したドローンが途中のドローンポートに自動着陸。充電を経て目的の棚池まで飛行して薬剤を散布するというもの。実験でのドローンの飛行距離は6.3Km、高低差は100mほどもあるという。山本氏はこの実証実験において「ゼンリンの3次元地図が大いに役立った」と話す。今後の取り組みとして、近畿日本鉄道の協力による鉄道災害時を想定した実験や、長岡市の協力による自治体課題解決の実験などのロードマップを示した。

長岡市山古志で使われたドローン(実機)。重量は約16Kg。棚池から3mの高度を保ち、下部のタンクに入れた薬剤を散布する。下に敷かれた金色のプレート上に自動着陸し充電を行う
長岡市山古志で使われたドローン(実機)。重量は約16Kg。棚池から3mの高度を保ち、下部のタンクに入れた薬剤を散布する。下に敷かれた金色のプレート上に自動着陸し充電を行う
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スマートドローンの構想に参加する各メーカーから担当者が登壇。パネルディスカッションも開かれた。左からKDDIの山本泰英氏、ゼンリンの藤沢秀幸氏、プロドローンの菅木紀代一氏、テラドローンの徳重徹氏、ウェザーニューズの石橋知博氏
スマートドローンの構想に参加する各メーカーから担当者が登壇。パネルディスカッションも開かれた。左からKDDIの山本泰英氏、ゼンリンの藤沢秀幸氏、プロドローンの菅木紀代一氏、テラドローンの徳重徹氏、ウェザーニューズの石橋知博氏
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