UEI、ソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)、WiLの3社は2017年11月29日、人工知能(AI)の普及を目指す新会社「ギリア(GHELIA)」を共同で設立したと発表した。米Amazon.comや米Facebook、米Google、米MicrosoftといったIT大手が強いAIのディープラーニング(深層学習)分野について、新会社は子供を含めた誰もが使いこなせるようなプラットフォームの開発を目指す。

ギリアの設立を発表する清水 亮社長
ギリアの設立を発表する清水 亮社長
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 WiLの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)である伊佐山 元氏は発表会のビデオメッセージで「かつてSteve JobsがiPodでデジタル音楽機器の市場を活性化させたように、AIも一般の人が使える形にならないと普及しない」とコメントし、ギリアの果たす役割への期待を語った。ギリアの社長に就任する清水 亮氏は「AIが発展すると学歴や能力は関係なくなり『こういうものができると便利』という勘が重要」と、より多くの人が使えることの意味を指摘する。

 ギリアは第一弾の製品として、プラグラミングなしでディープラーニングを利用できるサービス「GHELIA Studio」を提供する。GHEHIL Studioでは、写真をまとめて送信すると、「画像のデータから形状などの特徴をつかむ」「魚や鳥など画像を分類する」「モノクロからカラーなどに画像を変換する」といったAIテンプレートが提案される。この中から利用したいテンプレートを選択すれば送った写真の学習を始めてAIモデルを生成してくれる。

 GHELIA Studioはインターネット上のサービスとして公開する。料金は未定だが「無料で利用可能にすることを考えている」(清水氏)という。2017年中にベータ版を公開し、2018年3月までに製品版を提供する予定だ。クラウドサービス以外に、Ubuntuを搭載したパソコン上でも利用できるオンプレミス版も用意する。

 GHELIA Studioで開発した学習モデルを公開する「みんなのAI」というクラウドサービスも用意する。これは、AI学習モデルをやり取りするマーケットプレイスで、ほかの人が公開したモデルの中で便利そうなものがあれば、使ってみることが可能になる。「AIにおけるYouTubeみたいなもの」(清水氏)。

 2018年には、みんなのAIに登録したAI学習モデルをスマホで利用するアプリ「GHELIA Lens」の提供を予定している。これを使えば、カメラに写った映像を自動認識して、動物や昆虫の名前、食べ物のカロリーなどがリアルタイムで表示できるようになる。それ以外にも、手書き方式のタブレット端末など、幅広い製品開発を計画している。

開発中のタブレットを手にする清水社長を中心に、写真撮影に応じる取締役会長の北野 宏明氏(左)と副社長の松本 真尚氏(右)
開発中のタブレットを手にする清水社長を中心に、写真撮影に応じる取締役会長の北野 宏明氏(左)と副社長の松本 真尚氏(右)
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 新会社の資本金は1億5000万円。出資比率は、UEIが42.8%、ソニーCSLとWiLがそれぞれ28.6%ずつ。代表取締役社長には清水氏(UEI社長)が就任し、取締役会長に北野 宏明氏(ソニーCSL社長)、そのほかの取締役に伊佐山 元(WiL最高経営責任者)など4人が就任する。なお、清水氏は今後UEIの社長を辞め、ギリアの社長業に専念する予定だ。

■変更履歴
記事掲載当初、2番目の写真キャプションで「松本 真直氏」としていましたが、正しくは「松本 真尚氏」です。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。 [2017/12/1 17:45]