LINEと国立情報学研究所(NII)は2017年11月27日、AI(人工知能)の共同研究に取り組む覚書を交わしたと発表した。2018年度に共同研究の部門をNII内に設置し、現在よりも柔軟性を備えたAIや社会課題を解決するためのAIを開発する。

 研究期間は3年以上で研究費などはLINEが負担する。研究するAIは、より柔軟性を備えた知性を指す「ロバストインテリジェンス(強靱な知性)」と、社会課題を解決する「ソーシャルテクノロジー(社会技術)」を主軸に置くという。

 チャットAIの例で言えば、ロバストインテリジェンスは、ユーザーの話し言葉に曖昧さがあっても推論を働かせて情報を補完しながら答えたり、AIが持つ知識が不十分でも可能な範囲でユーザーの要求に近い回答をしようと努力したりする、人から見て受け答えの許容範囲が広いAI技術を指す。

 柔軟性を持った社会課題を解決するAIとしては、行政サービスの問い合わせに分かりやすく回答できるチャットボットの開発が候補に挙がっている。共同研究に参加する予定の京都大学大学院情報学研究科の黒橋禎夫教授は、地方自治体のホームページに掲載したFAQを基にシナリオなどを自動的に生成し、対話型で質問に回答できるチャットボットを簡単に開発・運用できる技術の開発を進めている。この研究開発を発展させるという。

 ほかの研究も、防災や教育、高齢者や弱者支援、子育て支援、消滅危機言語の保存活動など、社会問題解決に使うAIがテーマになる。共同研究には京都大学の黒橋教授のほかに東北大学など、NIIと関係を持つ様々な大学や研究機関の研究者が参加する予定だという。

会見で握手する国立情報学研究所の喜連川優所長(左)とLINEの出沢剛社長(右)
会見で握手する国立情報学研究所の喜連川優所長(左)とLINEの出沢剛社長(右)
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 LINEの出沢剛社長は、開発した技術をメッセンジャーアプリ「LINE」やAIスピーカー「Clova WAVE」などの「LINEが提供するアプリやデバイスに広く搭載していく」と回答した。

 NIIの喜連川優所長は「我々の研究開発は利益を生む技術よりも問題解決の技術に焦点を当てている。災害時のコミュニケーションツールとして開発が始まったLINEと、次のコミュニケーション手段を研究することは意義がある」と語った。

 今回の共同研究の成果はLINEが活用するほかは、原則としてNII側が論文などの形で公開するという。