不動産サービス大手のCBREは2017年11月14日、データセンターの需給見通しについて、今後2020年にかけて新設ペースが鈍り、需要の伸びに対して供給が不足する懸念があるとの見通しを示した。同日開催した報道関係者向け説明会で浅木文規アソシエイトディレクターが明らかにした。

データセンター関連の不動産市況について説明する、CBREの浅木文規アソシエイトディレクター
データセンター関連の不動産市況について説明する、CBREの浅木文規アソシエイトディレクター
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 浅木氏によると、自社利用を除くデータセンターの新設は2016年に11棟、2011~16年の平均では7~8棟ペースだったが「2017~18年は2年間の合計でも10棟に満たない見通し」とペースダウンする見通し。一方でデータセンターを使いたいという引き合いは、ビッグデータやFinTechに関連するニーズの高まりで増加傾向にあるとする。

 実際、浅木氏のもとにもデータセンター事業者から「建設用地を探してほしい」との要望が2017年に入って急増しており、「今までは2年以内に稼働できる用地でなければ商談が成立しなかったが、最近は『3~5年後でも構わない』と条件を広げて探す顧客が増えている」とする。

 浅木氏が理由として挙げるのは、主に電力供給の面で条件に合う立地が不足していることだ。例えば延床面積1万平方メートル級のデータセンターであれば6万ボルトといった「特別高圧」の電力供給が必要で、電力会社は既存の特別高圧の送電線を流用するか、新規に敷設する必要がある。

 工場や研究所の跡地をデータセンターとして再利用し、既存の送電線などを流用できる場合は問題ないが、東京・大阪の中心部から50km圏内でそうした用地は少なくなっている。新規に送電線を敷設する場合は鉄塔の新設や送電網の容量拡張などが必要になり、「鉄塔の用地買収や許認可まで含めると、多くの顧客が求める2年以内の稼働開始は難しく、現実的には3~5年後かかってしまう」とする。

 郊外や湾岸エリアでの新設も敬遠されるという。「例えば東京近郊では千葉県印西市や東京都府中市、三鷹市、多摩ニュータウン一帯より郊外になると、顧客企業の既存のデータセンターと技術者が行き来するのが困難になり、人員の手当てがネックになる。通信各社の相互接続点(POI)が東京・大手町や大阪・堂島に集中しており、地理的に離れると遅延の問題も出てくる。湾岸エリアはコストを掛けて水害対策を万全にすれば建設できるが、(顧客企業が)利用者を募集する際に『本当に大丈夫か』と疑問を呈されることが多いようだ」と浅木氏は明かす。

 対策として浅木氏は「3~5年後の稼働開始を見越して早めに用地の確保と特別高圧の申し込みをしておき、準備が整うまでは別用途での利用できないか検討しておく」ことなどを提言している。