日本マイクロソフトは2017年11月8日、MR(Mixed Reality=複合現実)の立体映像を見せるためのヘッドマウントディスプレイ(HMD)である「HoloLens(ホロレンズ)」の日本における活用事例を発表した。

小柳建設の小柳卓蔵社長
小柳建設の小柳卓蔵社長
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 新潟県三条市に本社を置く地場ゼネコンの小柳建設は、2017年4月にホロレンズを建設現場で活用する「ホロストラクション」プロジェクトを始めると発表していたが、今回新たに「リモートコミュニケーション」機能のデモを披露した。

 新機能を使えば、現場監督とオフィスにいる設計者などの関係者が最大5人まで、ホロレンズの中でコミュニケーションできる。ホロレンズを装着した現場監督が画面上で相手を指定すると、ビデオ会議が始まる。

小柳建設におけるホロレンズの利用イメージ。工事現場以外の場所から、現場の橋の様子や工程表を確認
小柳建設におけるホロレンズの利用イメージ。工事現場以外の場所から、現場の橋の様子や工程表を確認
(出所:日本マイクロソフト)
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 画面上に相手のアバターが現れ、あたかも工事現場で一緒に打ち合わせをしているかのようになる。設計図面やそれを3次元化したモデル、工程表や施工記録などの資料を共有しながら打ち合わせを進められる。

 小柳建設は、2017年9月中旬から新潟県内の土木工事現場でホロレンズを業務に活用する実証実験を始めた。小柳卓蔵社長は「工事現場に行かなくても現場の様子を把握しやすくなる。理想とする建設業の在り方に一歩近づいた」と述べた。

 小柳建設は、ホロレンズによるMRを建設業の人手不足の解決に生かすことを考えている。従来の工事現場では、平面図面を見ながら作業を進めることが多い。ベテランの現場監督や施工担当者は、平面図面から工事の完成イメージを想像して作業するスキルを持つ。だが、人手不足に伴い、経験が浅い若手が現場に行く機会も増えつつある。

 小柳社長は「経験の浅い現場監督は立体的な完成イメージを平面図形から的確に把握できなかったり、把握できてもイメージを施工担当者にうまく伝えられなかったりすることがある。最悪の場合は、コンクリート打設後に誤りに気づいて手戻りが発生し、施工が遅れることもある。こうした課題をホロレンズで解決したい」と話した。