セキュリティベンチャーのカウリスは2017年11月8日、不正アクセス検知サービス「FraudAlert」をアジア太平洋地域で展開すると発表した。2018年6月までにシンガポールに現地法人を設立。AIによる省力化で実現した割安な料金を武器に、FinTechやIoTで高まるアジアのサイバーセキュリティ需要を取り込む。

 FraudAlertは、不正なログインや会員登録を図るなりすまし行為を検知するサービス。ユーザーログの約80項目を機械学習にかけて挙動の異常性を判定する人工知能(AI)を構築し、不審なユーザーをブロックする。企業は自社サイトのログインページなどにFraudAlert用のJavaScriptプログラムを組み込むだけで利用を始められる。2015年12月の創業から約2年でメガバンクや通信事業者などが導入し、7000万ユーザーを保護。2018年1月までに3億ユーザーになるという。

不正アクセス検知サービス「FraudAlert」の管理画面。なりすまし行為を危険度に応じて分類してくれる
不正アクセス検知サービス「FraudAlert」の管理画面。なりすまし行為を危険度に応じて分類してくれる
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 カウリスの島津敦好社長は「人手による判定が不要で低コスト。AIで不審なユーザーにのみ追加認証を要求するため、ユーザーに無用な不便を押し付けない」とFraudAlertの強みを語る。インドを筆頭にアジアでネットバンキングやIoTのユーザーが増えるなかで、島津社長は「他社のセキュリティサービスでは被害額に見合わないケースでも、比較的安価なFraudAlertであれば釣り合う」とみる。ある企業の相見積もりでは、他社の約9億円/年に対してFraudAlertは約960万円/年と「ほぼ100倍の差が付いた」(同氏)。

 事業拡大に際して、Uber Japan代表などを務めた塩濱剛治氏が取締役副社長に、ベンチャー育成を手掛けるクオンタムリープ社長で元ソニーの出井伸之氏を社外取締役に招いた。塩濱副社長は「カウリス社内の組織固めを担い、Uber時代に得た拠点の迅速な立ち上げと展開の知見を生かす」(同氏)。出井氏は「IoT時代は全員が標的になる。今のところ“丸裸”な状態にあるユーザーを守ってくれる企業として社外取締役を引き受けた」とコメントした。

左から、カウリスの出井伸之社外取締役、塩濱剛治取締役副社長、島津敦好社長
左から、カウリスの出井伸之社外取締役、塩濱剛治取締役副社長、島津敦好社長
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