富士通と中国レノボ・グループ、日本政策投資銀行(DBJ)は2017年11月2日、PCと関連製品の研究開発・設計・製造・販売を担う合弁会社を設立することで、正式に合意したと発表した。

 富士通は100%子会社の富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式のうち、51%をレノボに、5%をDBJにそれぞれ譲渡し、FCCLを3社の合弁会社とする。株式譲渡は2018年度第1四半期を目途に実施する。富士通の譲渡価額は280億円。合弁会社の社長には、現在の齋藤邦彰社長が就任する。

富士通とレノボ・グループの首脳陣
富士通とレノボ・グループの首脳陣
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 富士通とレノボ・グループは同日、東京都内で共同会見を開き、合弁会社設立の狙いや今後の事業体制を説明した。

 最初に登壇した富士通の田中達也社長は、FCCLが合弁会社となった後も、富士通ブランドのPCの開発・製造を継続すると明言。「企業向けの製品はサポートサービスと合わせて、従来通り富士通が責任を持って提供する。個人向けの製品とサポートサービスはFCCLが提供していくことで、安心して製品を利用できるようにしていく」とした。

 富士通はレノボ・グループとのPC事業における戦略的提携の検討について、2016年10月に発表済み。2015年度に同事業で100億~200億円の赤字を計上したことが背景にあった。それから正式合意の発表まで約1年かかった。この点について田中社長は、「顧客にとって最適な製品を提供するため、最も効果的なスキーム作りを2社で時間をかけて行い、本日の合意に至った」と説明した。

富士通の田中達也社長
富士通の田中達也社長
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 具体的には、PC部品などの調達をレノボが担当し、FCCLに供給する。FCCLは合弁会社となった後も、これまでの製品開発や製造体制を維持し、富士通ブランドの製品の提供を続ける。「PC分野で最大規模のレノボ・グループには世界屈指の調達力などがある。そういった力を借りることで、富士通ブランドの製品をより魅力的なものにしていける。最高のコラボレーションだ」(田中社長)と強調した。

 一方、レノボは、今回の合弁会社設立で、日本のPC市場における事業拡大を狙う。レノボ・グループのヤンチン・ヤン会長兼CEO(最高経営責任者)は「信頼性の高いブランドの製品を提供できるようになることで、世界3位の規模がある日本市場での販売力をさらに強化できる」とした。

レノボ・グループのヤンチン・ヤン会長兼CEO(最高経営責任者)
レノボ・グループのヤンチン・ヤン会長兼CEO(最高経営責任者)
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 さらにレノボ・グループのケン・ウォン シニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域プレジデントは、「日本は2020年に東京オリンピックの開催を控えていたり、企業の投資が増えていたりして、PC市場が成長している。特に日本市場は、品質の高いプレミアム製品が半数以上を占める。プレミアム製品を供給できる経営資源を持ち合わせていなければ、日本での事業は伸ばせない」と指摘した。

 レノボは2011年にNECと合弁会社を設立して事業を展開中だが、「FCCLと他の事業との統合はない。FCCLの国内生産拠点の閉鎖もない」(ウォン・シニアバイスプレジデント)という。

 FCCLの齋藤社長は「当社はこれまで、PCやタブレット端末といった既存の商品に、持ち運びのしやすさや静脈認証をはじめとするセキュリティ機能を加えて付加価値を高めてきた。今後は、エッジコンピューティング向けなど世の中のトレンドに追従した製品を提供していきたい」と意気込みを語った。