「AI(人工知能)は2020年までに180万の仕事を消すが、230万の新たな雇用を創出する」。米ガートナーでシニア・リサーチ委員会の委員長を務めるデイヴィッド・ウィリス バイス プレジデント 兼 最上級アナリストは2017年10月31日、東京・品川で開催されている「Gartner Symposium/ITxpo 2017」でこのように発言した。

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 ウィリス氏は「AIが採用されるにつれて『仕事がなくなるのではないか』という不安が高まっている。特に金融機関からはFinTechで大量の雇用が失われる、という声が上がっている」と話す。「実際にAIが脅威となる仕事はある。事務、銀行窓口、そのほか一部のホワイトカラーの仕事はなくなるだろうと考えている」(ウィリス氏)。いわゆる“事務仕事”は消滅していく。

 その一方で「エンジニアとカスタマーサービスは需要が高まるだろう」(ウィリス氏)と予測する。エンジニアはシステム構築やAIの学習といった直接的な需要喚起で雇用が増える。カスタマーサービスは、AIの活用でサービスの質が上がり、それによってサービスの需要が高まって雇用が生まれる。ウィリス氏は「特に金融分野や医療分野で、人対人の対応を求める需要が高まるだろう」と話した。

 例えば金融機関では「従来の窓口は、顧客にパーソナル化されていない。今後はパーソナル化されたウェルスマネジメント(資産運用・管理)のようなサービスに変わっていく」(ウィリス氏)と予測する。現在はウェルスマネジメントの提供には、特別なスキルや知識が必要だ。AIをはじめとしたテクノロジーは人のスキルを補完して、より広い人材でサービスを提供できるようにする。ウィリス氏は同様のことが医療や介護の分野でも起こると予測する。