NECは2017年10月25日、ベクトル型コンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を発売すると発表した。ベクトル型スーパーコンピュータ「SX-ACE」のアーキテクチャーを引き継いでおり、デスクトップ型やラックサーバー型などの様々な形態で提供する。「研究機関などを中心とした従来の高性能計算(HPC)用途のほかに、需要予測などの企業のビッグデータ解析の用途を開拓して事業を拡大する」とNECの福田公彦執行役員常務は話す。2018年2月から順次出荷を始める。3年間で関連事業を合わせて1000億円の売り上げを目指す。

「ベクトルエンジン」を手にする福田公彦執行役員常務
「ベクトルエンジン」を手にする福田公彦執行役員常務
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 ベクトル演算プロセッサーを搭載する拡張カード型のモジュール「ベクトルエンジン」を内蔵したコンピュータを販売する。研究者やデータ解析担当者の机のそばに置けるタワー型、データセンターのラックに収めるラックマウント型、専用ラックに最大64個のベクトルエンジンを収納したラック型を用意した。現時点ではベクトルエンジン単体の販売は予定していない。

 米インテルのサーバー用CPU「Xeon」をホストとして利用し、専用のコンパイラーでコンパイルしたプログラム全体をベクトルエンジン上で実行する。プログラムの一部の処理をGPU(Graphics Processing Unit)に実行させる場合に比べて、データのコピーにかかる時間を短縮できるとする。大量のデータを使って複雑な計算を実行させる気象や流体などのシミュレーション、履歴データに基づく需要予測、人の行動や好みに応じたレコメンデーションなどの用途で強みがあるとみる。

ベクトルエンジンを8個搭載した4Uサイズのラックマウント型コンピュータ
ベクトルエンジンを8個搭載した4Uサイズのラックマウント型コンピュータ
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 ベクトルエンジンに搭載したプロセッサーはSX-ACEのプロセッサーの約10倍の演算性能を持つ。倍精度浮動小数点の演算性能が307Gフロップス(1秒当たりの演算回数)に達する演算コアを8個並べた。パッケージ基板上のプロセッサーの隣に6個の積層型メモリー「HBM2」を載せた。プロセッサーとメモリーの間の帯域幅は毎秒1.2Tバイトで「世界最速」(NEC)という。

 「SXは従来のスパコンの系譜だと示し、Auroraは多様な産業に広がること、TSUBASAは大きく羽ばたくことの願いを込めて名付けた」(福田常務)。3年間の売上高1000億円のうち、既存のHPC用途が7割で、ビッグデータ解析などの産業用途が3割になるとの見通しを示した。

プロセッサーのパッケージ上に6個の積層型メモリー「HBM2」を搭載した
プロセッサーのパッケージ上に6個の積層型メモリー「HBM2」を搭載した
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