伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は2017年10月13日、利用企業が人工知能(AI)技術を使いやすくするハイブリッドクラウド環境「CTC Integrated AI Platform Stack(CINAPS:シナプス)」の提供を開始した。AIが使うデータの準備、学習データの加工、データを効率的に運用できるアプリケーション開発など、AIの導入から運用までに必要な道具立て一式を提供する。CTCは今後3年間でシナプスを含むAI関連ビジネスで50億円の売り上げを目指す。

伊藤忠テクノソリューションズの照井一由エグゼクティブエンジニア
伊藤忠テクノソリューションズの照井一由エグゼクティブエンジニア
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 シナプスは、企業がAI活用を始める際に必要となるデータを効率的に処理するところから、実際にAIでデータを運用するまでをパッケージにしたのが特徴。AI活用の大前提となるデータ処理は、「思った以上に難易度が高い。どうやってデータを扱うのか、加工方法はどうするかといった点に苦慮する」(同社の照井一由エグゼクティブエンジニア)。CTCでは2016年から数十件のAI導入案件を進めており、そこで得たノウハウをシナプスに盛り込んだ。

 データの処理では、例えば、データをコピーして学習能力を高めたり、データを圧縮して処理速度を上げたりする。データを基に推論エンジンを作る際には、GPUの使用有無、データへのアクセス方法、ストレージへの負荷など検討すべき点は多いという。こうした観点をサービスに体系的にまとめた。

 AI活用が各社で進む一方で、AIを使う前提となる膨大なデータを処理するノウハウは未開拓という。AI導入にたどり着く前に「データが作れないからあきらめようという話さえある」(照井エグゼクティブエンジニア)。データの処理から企業を支援することで、企業はAI活用をスムーズに始められ、データ分析に集中できるメリットがある。

人工知能(AI)導入時に考慮すべき特殊要件の例
人工知能(AI)導入時に考慮すべき特殊要件の例
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 主に製造業や通信会社など、IoT(インターネット・オブ・シングズ)機器で収集したデータを含む膨大なデータを保有している企業を導入先に見込む。大規模投資をする前のスモールスタートの検証としても需要を見込んでいる。プライベートクラウド、パブリッククラウド両方に対応し、セキュリティ要件や規模、予算などに応じて適切な環境を選択できるとする。