インテルは2017年9月29日、米インテルのIT部門の評価レポート「インテルITパフォーマンス・レポート 2016~2017年」を公開した。人工知能(AI)や機械学習による生産効率の改善などで、この3年間で6億5600万ドル相当の収益改善効果を得たという。

 インテルのIT部門は世界で58カ所のデータセンターと10万人超の従業員、および約22万デバイスを管理する。2016年はデータセンターの効率化や一部の基幹系システムのクラウド移行、AI/機械学習による生産や在庫管理システムのリアルタイム化、セキュリティ教育の強化などに取り組んだ。

 データセンターについては、CPU部とI/O部をそれぞれモジュール化した新設計のブレードサーバーを開発。ブレードサーバーごと交換していた更新に比べて、コストを最大60%削減できる見通しだ。既に3万台を導入済みで、年間約100万ドルのコスト削減を見込む。「これまで4年でサーバーを更新していたが、2年で最新CPUに入れ替えても無駄が生じない」(インテルの邱天意 情報システム部Japan and APAC地域部長)。

インテルの邱天意 情報システム部Japan and APAC地域部長
インテルの邱天意 情報システム部Japan and APAC地域部長
[画像のクリックで拡大表示]

 クラウドでは、18年間にわたって利用してきた人事の基幹系システムをクラウドに移行した。毎年更新するクラウドとオンプレミスのコスト比較を基に、今後もクラウドへの移行を進める。「何をどうクラウドに移行するか、機密情報やセキュリティを精査するブローカー(整理役)が重要」(邱氏)。

 AI/機械学習では、工場で生じるデータを機械学習にかけ、予防保守や歩留まりの向上を実現する予測モデルを開発。製品の市場投入までの時間を最大で39週間短縮した。SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)システムでは、在庫管理のリアルタイム化で在庫を12.5%削減。リアルタイム化による一元管理と機械学習による需給予測により、在庫管理に携わる人員を別の業務に振り向けられるようになったという。

在庫管理をリアルタイム化。業務プロセス(BPR)も改善した。
在庫管理をリアルタイム化。業務プロセス(BPR)も改善した。
[画像のクリックで拡大表示]

 AI/機械学習に携わる人員は2009年のスタート時は10人程度だったが、現在は150人程度という。基盤技術として、同社のCPU主体のデータセンターで高速に機械学習を実行するソフトウエアを開発。その成果は「Intel Deep Learning SDK」として外部提供している。

 セキュリティについては、まずソフトウエア開発者に対してセキュアな開発手法を学べる「セキュリティ・カレッジ」を開講。エンドユーザーに対しては、従業員10万人に訓練用のフィッシングメールを送信し、誤って反応したユーザーへの研修に取り組んでいるという。