クラウド型の経費精算処理サービスを提供する米コンカーテクノロジーズは2017年9月25日、都内で会見を開き、VR(仮想現実)や人工知能、ボットなど先進技術への取り組み状況を披露した。

 会見では米本社に設けられた研究開発部門「コンカーラブズ(Concur Labs)」の立ち上げメンバーの1人であるリチャード・パケット上級開発マネージャーら幹部が登壇。パケット氏は2016年1月にConcur Labsを設立した狙いを「通常のサービス開発のサイクルから外れた、挑戦的で面白いプロトタイプの開発を促すための組織が必要だった。Labsの取り組みで社内のアイデアを形にし『コンカーはイノベーティブだ』というブランドを確立したい」と説明した。

 開発したプロトタイプの1つが、VR(仮想現実)技術を使い、様々な情報や手段を駆使して社員がコミュニケーションを取ったり業務を遂行したりできるシステムだ。経理など管理部門のスタッフが、出張など業務中の現業部門の社員を支援するような用途を見込んでいる。

写真●VRの画面上で社員の情報にアクセスする
写真●VRの画面上で社員の情報にアクセスする
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 例えば、出張中や駐在する社員が現地で災害に巻き込まれた場合、管理部門スタッフがこのVRシステムを使い、現地の被災情報や飛行機・鉄道など交通機関の運行情報などをVR画面中にある地球儀や空中に浮かぶウインドウ画面を操作しながら素早く入手できる。VR画面上で現地にいる社員とのビデオ通話をしながら、帰国の手段の確保まで行うといった使い方を想定している。

 VR画面に浮かぶ社員名簿から現地にいる該当者を検索して素早く連絡を取ったり、被災情報や、交通機関の情報に最も簡便にアクセスして対応策を取ったりできるなど、VR技術を素早く情報にアクセスするのに役立つ手段と位置付けたシステムだ。

 チャットボットとの対話で経費精算ができるサービスもLabsで開発したという。米国で普及するビジネス用チャットサービス「Slack」などに対応しており、既に米国で顧客に提供しているほか、日本語に対応したボットも開発済みだ。行き先などを問いかけるボットに回答することで、回答内容が自動的にコンカーの経費精算のデータベースに反映される。

 チャットボットに続いて、音声認識技術を使った対話インターフェースを経費精算サービスに使う研究開発を強化している。協業先として、Amazonの音声認識エンジン「Alexa」の担当チームと共同開発を進めているという。

 パケット氏は、Labsを中核に社内でイノベーションを促す活動についても説明した。短期の合宿形式でアイデアをアプリケーションなどの形にするハッカソンは、社員のほか協業する企業の社員にも参加してもらい、世界各地で展開している。

 さらにハッカソンの成果物をデータベースに登録し、社内向けWebサイト「HACKATHON SEARCH」で社員だれもが検索できるようにした。ハッカソンで作ったプロトタイプを別の社員が再発見して新しいサービス開発につなげたり、似たアイデアを二重でプロトタイプにする無駄を省いたりするための工夫だ。

 プログラミングのスキルを持たないスタッフがハッカソンやアイデアのプロトタイピングに参加できる仕組みも取り入れているという。紙での工作や付箋紙などを使ってサービスの体験や利用シーンを説明できるようにするもの。「優れたアイデアは技術者でない社員も持っている」(パケット氏)。一般社員らの参加を促すことでハッカソンの活性化を図っている。

 Labsは日本でも開設する予定。その一環として、2018年春に協業先企業などが参加するハッカソンのイベントを日本で開催する計画も明らかにした。