日本郵船、日本郵船グループのMTI、NTT、NTTデータの4社は2017年9月19日、船舶に関するIoT(インターネット・オブ・シングズ)プラットフォームの開発についての共同実験を始めると発表した。2018年夏ごろまでの約1年間を予定する。日本郵船グループが開発している船舶情報管理システムとNTTのエッジコンピューティング技術などを組み合わせることで、より安全な運航やコスト削減を目指す。

MTIの船舶技術部門の安藤英幸部門長
MTIの船舶技術部門の安藤英幸部門長
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 共同実験では日本郵船グループが開発している「SIMS(Ship Information Managemet System)」にNTTのエッジコンピューティング技術を適用して、船舶の機器やシステムを統合管理する技術の開発を目指す。SIMSは船の運航状態や機器の状態などの船舶のデータを、陸上の船舶管理担当者と船舶の船上員の間で共有するためのシステムである。「船舶の制御用センサーから得られるデータを活用するための基盤であるSIMSを強化する」とMTI 船舶技術部門の安藤英幸部門長は共同実験の狙いを説明する。

 共同実験では船に搭載しているアプリを、陸上からでも保守できるようにすることを目指す。具体的には通信衛星を介した船陸間通信を使って、SIMS上で動く各種アプリケーションのプログラムを遠隔で更新したり不具合を修正したりする。船やエンジン、発電機などの稼働状況や状態を可視化するアプリケーションが主な対象だ。従来は船が停泊している期間などに、エンジニアが船に乗り込んで機器やアプリを直接保守していた。

船舶IoTの共同実験の概要図
船舶IoTの共同実験の概要図
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 船上のデータはエンジンなどの機関系データと、風向きなどの航海系データの2種類がある。機関系データは10秒から1分に1回、航海系データはほぼ毎秒、エッジにデータを送る。エッジ側で処理した結果を、用途にもよるが約1時間おきに陸上に送ることで、船陸でデータを共有する。アプリケーションの改善にも役立てる。

 「海運業界はエッジコンピューティングという技術が最も生きる産業のひとつだ」とNTTのユビキタスサービスシステム研究部のユビキタスソフトウエア基盤研究グループ グループリーダーの山崎育生氏は述べる。陸に比べて船上は通信環境が良くないため「孤立状態に近い」(山崎氏)からだ。船上で実行できるデータ処理やアプリ保守作業を増やすことで、船舶を安定的に運航したりコストを抑制したりできるという。