ソニーネットワークコミュニケーションズは2017年9月14日、ソフト開発者の定常作業を自動化するクラウドサービスを手掛ける100%子会社「Rocro」の設立を発表した。同日付けで品質テストやドキュメント作成を自動化する「Rocro」サービスの試験提供を始めた。開発高速化に意欲的なスタートアップ企業の利用を見込む。

 Rocroが提供するのは、ソフトウエア開発で生じるコードレビュー、ドキュメント作成、システムの負荷試験といった定常的な作業を自動化するクラウドサービス。開発・運用一体でサービス開発を進める、いわゆるDevOpsの支援サービスだ。ソニーネットワークコミュニケーションズのサービスで利用するクラウド基盤の構築過程で生まれた技術を外販する。

Rocroの小早川知昭社長(写真右)と峯尾嘉征社長兼CTO(同左)
Rocroの小早川知昭社長(写真右)と峯尾嘉征社長兼CTO(同左)
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 Rocroは小早川知昭社長や峯尾嘉征社長兼CTOをはじめ、コンピュータサイエンスや電気・電子工学の博士・修士号を持つエンジニアをソニーグループを中心に集めた。10人程度の社員が開発に携わる。エンジニア中心の独立企業とすることで、想定ユーザーとするスタートアップ企業、特に米国のユーザーに合わせたスピード感のあるサービス展開を図る。ソニーネットワークコミュニケーションズの玉井久視執行役員SVPは「DevOps市場向けのサービスは高い収益性が見込める有望な事業。ソニーグループの人材獲得への貢献も見込める」とRocroの設立企図を説明する。

 試験提供を始めたのは、ソースコードの文法や規約への準拠度合いを自動でチェックする「Inspecode」と、開発したプログラムのインタフェース(API)の仕様を表すドキュメントを自動生成する「Docstand」の2サービス。

 Inspecodeは、自動でコードの品質を数値化するほか、冗長なコードを省くなどのリファクタリングを自動化する。通常は個別に導入・適用する手間がかかる「Checkstyle」「golint」「Pyflakes」などのチェックツールを、ソースコードのプログラム言語を自動判定した上で一括適用してくれる。Docstandは、自動生成したAPIドキュメントを開発者間でリアルタイムに共有できるため、開発効率の向上が見込める。

「Inspecode」のレポート画面。ソースコード共有サイト「GitHub」などと連携して自動でコードレビューを実施し、結果を図示する。
「Inspecode」のレポート画面。ソースコード共有サイト「GitHub」などと連携して自動でコードレビューを実施し、結果を図示する。
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 速度面で優位に立つために、InspecodeとDocstandで適用する各種ツールを自動で並列実行する技術を独自開発した。「例えば他社サービスで1時間かかっていた作業が10分で済む」(Rocroの小早川知昭社長)という。

コードレビューやドキュメント生成にかかる速度は、サービスで利用する各種ツールを自動で並列実行する技術を開発して高速化した。
コードレビューやドキュメント生成にかかる速度は、サービスで利用する各種ツールを自動で並列実行する技術を開発して高速化した。
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 このほか、アプリケーションの負荷試験を自動化する「Loadroid」を非公開ベータ版として先行提供する。ユーザーは、YAMLおよびJavaScriptで負荷テストのシナリオを記述。Loadroidはシナリオに沿って仮想サーバー群を自動で構成して負荷テストを実行し、テスト結果をグラフなどで出力する。

 価格は試験提供期間中は無料で、「数カ月後をめどに、個人は無償、商用は有償といったフリーミアムモデルへの移行を検討している」(小早川社長)。有償化時の料金は、想定する小規模チームでの利用時で「InspecodeとDocstandが月額で数万円、Loadroidは負荷に応じた従量制」(同)にする。

 今後はLoadroidを数カ月後をめどに試験提供を始める予定。スタートアップ企業が集まる米国を中心に、開発者イベントや会議などの場でRocroサービス群の認知を広める計画だ。2020年に年間数十億円規模の売り上げを目指す。