KPMGコンサルティングは2017年9月13日、世界10カ国の企業のCEO(最高経営責任者)を対象にした調査「KPMGグローバルCEO調査2017」の結果を発表した。同日実施したメディア向けの説明会では、調査対象国全体である「グローバル全体」と日本のCEOの回答の違いが説明された。

説明会で「KPMGグローバルCEO調査2017」の結果を説明するKPMGコンサルティングの宮原正弘代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)
説明会で「KPMGグローバルCEO調査2017」の結果を説明するKPMGコンサルティングの宮原正弘代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)
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 説明に立ったKPMGコンサルティングの宮原正弘代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)は、「日本企業のCEOにとって、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの最新テクノロジーを駆使したイノベーションが自社の業界にインパクトを与えるという危機意識は、世界に比べてとても高い。しかし、その対応に苦慮していることが見えてきた」と説明した。

 この調査は、各国のKPMGグループ会社を統括するKPMGインターナショナルが2017年2月から4月にかけて実施した。対象は、英国やドイツ、米国、オーストラリア、中国などに日本を加えた10カ国の企業のCEOだ。年間の売上高が5億ドル以上の中堅や大手、グローバル企業に所属している1261人から回答を得た。このなかには日本のCEO、100人の回答も含まれている。今回で実施が3年目。

 調査では、世界経済の見通しなどに加えて、AIやブロックチェーンなどの最新テクノロジーを使ったイノベーションに対する捉え方や、社内でのデータ活用状況についても尋ねた。説明会では、日本とグローバル全体を比較した結果が示された。

イノベーションの影響に関する調査結果を示した発表資料
イノベーションの影響に関する調査結果を示した発表資料
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 調査では「今後3年間で、最新テクノロジーを使ったイノベーションによって、自社の業界に大きな破壊が起こるかどうか」を尋ねた。その結果、日本のCEOの87%が「破壊が起こる」と回答。グローバル全体の48%を大きく上回った。

 加えて、技術イノベーションのきっかけになる最新テクノロジーの動きに追い付いていけるかどうかを質問。グローバル全体では47%が「最新テクノロジーに追い付いていくことに懸念を感じている」と答えたのに対し、日本のCEOはその割合が79%と、調査対象国のなかで最も高い結果となった。「日本のCEOは正しい情報を得られるように、最新テクノロジーに詳しいブレーンを持つことが大切だ」と、宮原社長は話す。「イノベ―ションの進歩に対応することに苦労している」と回答した日本のCEOも77%となり、グローバル全体の37%を大きく上回った。

調査では最新テクノロジーへの追随に日本のCEOが懸念していることも判明
調査では最新テクノロジーへの追随に日本のCEOが懸念していることも判明
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 調査では、社内データの活用状況についても尋ねた。「良質な顧客データの不足が、顧客を理解するうえでの阻害要因になっている」と考えている日本のCEOは82%に上った。グローバル全体は45%だった。

 一連の調査結果を踏まえてKPMGコンサルティングの宮原社長は、「日本企業のCEOは情報リテラシーが低いようだ。最新テクノロジーや社内に蓄積した様々なデータをどう経営に生かしていくのかという情報活用のマネジメントスタイルをCEOは確立していく必要がある」と指摘した。

 宮原社長はKPMGグループのあずさ監査法人でBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)プロジェクトなどに携わった経験を持つ。「日本企業では、IT部門や業務部門の担当者が、最新のテクノロジーをビジネスに適用するアイデアをふんだんに持っていることが多い。しかし、経営陣から投資対効果が見えないと指摘されて、実現に至らないケースがままあった」と明かす。

 これを受けて宮原社長は「CEOは、AIやブロックチェーンといった最新のテクノロジーをビジネスに生かせるよう、適切な人材を採用したり、強みを持つ他社とアライアンスを組んだりして、経営に生かす姿勢を社内で示す必要がある」と見解を述べた。そのうえで、「現場からの意見を組んで、AIなどの最新テクノロジーの現場へどう適用していくのか意思決定していくことが大切。IT部門に『AIを研究しておくように』と言い付けるだけでは不十分だ」と続けた。

 調査結果の説明に立った宮原社長は2017年7月、KPMGコンサルティングの社長に就任したばかりだ。宮原氏は、あずさ監査法人で財務部門向け支援サービスの事業部長や日本・アジア太平洋地域の代表などを務めた後、現職に就いている。

 今後のKPMGコンサルティングの経営について、宮原社長は「当社には、事業変革やデジタル戦略の策定などに長けたコンサルタントを多く所属している。しかし、組織として動けるようにするためには、改善の余地がある。会社としてのベクトルをそろえて、企業の人材配置など多岐にわたるコンサルティングで、テクノロジーを駆使した提案ができるようにしていきたい」と、意気込みを語った。