2017年9月11日、セブン銀行が同年8月3日に提供を開始したスマートフォンアプリでの海外送金サービスを、マイクロソフトのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」上で提供していることが分かった。2017年秋に提供を始めるリアルタイム振り込み機能も、Azure上に構築したサービス開発基盤で開発中だ。電通国際情報サービス(ISID)と日本マイクロソフトが、2017年9月11日に発表した。

 8月に提供を開始したスマホアプリによる海外送金サービスは、2017年9月11日時点では日本からの海外送金の中でも需要が高いフィリピン向けの送金に対応する。セブン銀行は従来から提携先の仕組みを通じて、ATM(現金自動預け払い機)やインターネットバンキングで海外送金サービスを提供している。今回はスマホアプリでの海外送金サービスシステムなど、利便性の高い独自サービスを素早く開発するためにAzureを採用した。開発を担ったISIDによると、フィリピン向けの送金ではAzure上に独自の仕組みを構築したことで「利用者の手数料を従来よりも下げられた」という。

セブン銀行の海外送金サービス
セブン銀行の海外送金サービス
(出所:セブン銀行のWebサイト)
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 海外送金サービスでは、スマホアプリや外部サービスから呼び出す海外送金や振り込みのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)と、海外送金提携先へのデータ連係機能をAzure上に構築した。AzureのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を活用することで開発期間を短縮している。「海外送金サービスシステムの標準的な開発工期に対し、2~3割は短くできた」(ISID)。AzureのPaaSでは、複数のAPIの振り分けや権限管理を一括で実行できる「Azure API Management」などを活用している。

 通貨レートの計算など、顧客情報とは関係ない部分のビジネスロジックもAzure上で開発している。開発はISIDと日本マイクロソフトのコンサルティング部隊が共同で進めた。「Azureを熟知したコンサルタントがいたことも、工期の短縮につながった」(ISID)。

 クラウドベースの開発支援ツールである「Visual Studio Team Services」も利用している。コンパイルやテストといった作業を自動化できるため、「アプリ開発を効率的に進められる」(ISID)。

 ISIDは2014年に、セブン銀行のインターネットバンキングシステムをプライベートクラウド上に構築済み。Azure上の海外送金サービスシステムとインターネットバンキングシステムは、Azureの閉域網接続サービス「ExpressRoute」で接続し、連携している。「Azure上には送金額や残高から引いた金額といった情報しか流れない。インターネットバンキングシステムで管理する顧客情報や、勘定系システムのデータはAzure上には送信されない」(ISID)仕組みだ。

 2017年秋に提供を開始するリアルタイム振り込み機能も、8月に提供を始めた海外送金サービスと同じく、Azure上に構築したサービス開発基盤で開発している。セブン銀行は2017年4月21日に、同機能の提供予定に関して発表済み。新興国出身の労働者向けに、金融・決済サービスを提供するFinTech(フィンテック)関連企業のドレミングをパートナーに選んでいる。