「自動車を事故に至らせない。これは航空機メーカーのDNAだ」――。2017年9月7日、都内で開かれた「東陽ソリューションフェア 2017」(東陽テクニカ主催)の基調講演に登壇したスバルの樋渡穣氏はこう協調した。同社で第一技術本部統合制御統括上級PGMを務める樋渡氏は運転支援システム「アイサイト」の開発者である。

スバルの樋渡穣第一技術本部統合制御統括上級PGM
スバルの樋渡穣第一技術本部統合制御統括上級PGM
[画像のクリックで拡大表示]

 樋渡氏によれば、スバルは長年のアイサイト開発で世界中の走行画像データを蓄積し、その距離は「200万kmを超える」(樋渡氏)という。米IBM製のサーバーでデータを管理しつつ、機械学習などで分析して、物体認識精度の向上に役立てていると話した。

 一方で樋渡氏は機械学習をブラックボックスとも見る。「ブラックボックスには人命を預けられない」(樋渡氏)。当面は入出力の対応関係が明確なルールベースシステムのアルゴリズムを画像認識に使っていくとの見解を示した。

 樋渡氏は「複雑化する自動車の安全担保が最大の課題」とも述べた。自動運転やコネクテッドカーが普及するにつれ、自動車の制御システムは複雑になり、車に関係するデータは車の中だけにとどまらない。樋渡氏は「法規上や開発上の課題に対し、各分野の専門家を集めて改革を進める。安易にレベル4やレベル5の自動運転を追わず、人を中心に据えたクルマ造りを続ける」とした。

スバルの2020年を見据えた取り組み
スバルの2020年を見据えた取り組み
[画像のクリックで拡大表示]