KDDIは2017年9月7日、5G(第5世代移動通信システム)の実用化に向けた韓国サムスン電子との共同実験で、時速190km超で移動する走行車両と2つの基地局との間で通信相手を切り替える「ハンドオーバー」に成功したと発表した。5Gのハンドオーバー性能を検証する実験としては世界最速での成功という。

 実験は5Gでの利用が見込まれる準ミリ波帯の28GHz帯を採用。韓国龍仁市にあるレーシングサーキット「Everland SPEED WAY」に複数の基地局設備を含む実験システムを導入して実施した。時速192kmでハンドオーバー性能を確認したほか、1つの基地局とは時速205kmで通信できることも確認した。

 ハンドオーバーは、端末が特定の基地局のカバーエリアから離れて別の基地局のエリアに移動した際に、通信する基地局を切り替える技術。多数の基地局を敷き詰めてサービスエリアを広げる携帯電話システムでは必須の機能だ。

 5Gは通信端末を持つ利用者に向けて基地局からビーム状に成形した電波を吹くビームフォーミングや、移動する利用者に追従してビーム状の電波の向きを変えるビームトラッキングなどの技術を採用する。このため、高速走行時のハンドオーバーでは、複数の基地局を探して通信相手を切り替える従来技術に加えて、ビームトラッキングの追従性などが課題となる。

 KDDIは2017年2月に東京都内で実施した実験で、時速60kmでのハンドオーバー実験に成功している。今回の実験成功で、5Gは高速走行中の車に加えて、高速走行中の鉄道車両でも十分に利用できる可能性が確認できたといえる。