宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2016年4月に運用の断念を発表した観測衛星「ひとみ」について、機体の制御を失敗した原因の1つがNECが設定したデータにあるとして5億円をJAXAに支払うことが2017年9月5日に分かった。NECによればJAXAから東京簡易裁判所に申し立てがあり、調停委員会からJAXAとNECへの調停内容を同日に受け入れた。

 ひとみは2016年2月に打ち上げられたX線天文衛星で、3月に地上の管制局と通信が途絶。上空で機体が損壊したとみられる。

 NECによれば制御失敗の原因の1つは、姿勢制御システムに入力するデータが「不適切だった」こと。機体を制御するための計算が狂い、姿勢を正常に保てなくなった。同社は「JAXAの期待に応えられなかったことへの反省と、道義的責任を感じたため、調停案を受け入れた」としている。

 ひとみの開発にはJAXAや米航空宇宙局(NASA)をはじめ、国内外の大学・研究機関など世界60以上の組織から250人を超える研究者が参加した。日本だけで310億円を拠出した大型国際プロジェクトは、打ち上げわずか40日足らずで頓挫した。

出所:JAXAのWebサイト
出所:JAXAのWebサイト
[画像のクリックで拡大表示]