三菱地所は2017年8月21日、東京・丸の内エリアでLPWA(ローパワー・ワイドエリア)の実証実験を実施すると発表した。大規模地震が発生した際、ビルの点検者や救護担当者の所在を、既存のLTE回線などを使わずに確認することを想定し、同社が9月1日に実施する防災訓練で実効性を検証する。

今回の実証実験に使う子機
今回の実証実験に使う子機
(写真提供:ハタプロ)
[画像のクリックで拡大表示]

 実証実験では、東京・大手町の同社本社ビルの高層階に親機を4台設置。通信方式は920MHz帯の電波を使うLoRaWAN方式で、大手町エリアから東京駅前の丸の内ビルディング(丸ビル)付近までの一帯をカバーする。子機10台は同社社員に配布し、エリア内を徒歩で巡回する。

 子機はGPSを内蔵しており、現在地の測位データをLPWA経由で親機に随時送信。親機は集約した位置情報をWebサイトの地図上にマッピングし、同社の管理者が閲覧できるようにする。LPWAの親機・子機やWebサイトなどは、NTTドコモとIoT(インターネット・オブ・シングズ)ベンチャーのハタプロが開発・提供する。

 LPWAはLTEや無線LAN(Wi-Fi)などと比べ通信速度が遅いものの、少ない消費電力で広範囲をカバーできるなどの特徴があり、IoTのセンサーネットワークを担う通信技術として期待されている。さまざまな分野で実証実験や試験導入が進んでいるが、防災用途の実証実験は珍しい。

今回の実証実験のシステム構成
今回の実証実験のシステム構成
(出所:三菱地所)
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の実証実験では親機を弁当箱程度のサイズとし、地震発生後に親機を取り出してビル高層階に設置するという使い方を想定している。三菱地所は今回のシステムについて、親機を常設としないことで設置・保守コストを抑えつつ、緊急時に迅速に所在確認できる仕組みとして期待している。各社は防災訓練で、ビルが密集する丸の内エリアでの電波到達をはじめ技術面や使い勝手について検証し、実用化に向けた課題の洗い出しなどに生かす考えだ。