ソフトバンクグループの孫正義社長は2017年8月7日、2017年4~6月期の決算発表会に登壇し「5Gは必ずやってくる重要な技術」と述べた。「通信速度が速くなり、通信のレイテンシーが短くなる。IoT(インターネット・オブ・シングズ)機器の様々な接続で、より適したネットワークが可能になる。利点がたくさんある」と力を込めた。

 孫社長は、「5G技術への期待を聞きたい」との記者の問いに答えた。5Gは2020年にも商用化されるとみられているが、孫社長は「ソフトバンクは5Gの中核的技術の1つであるMassive MIMO(マッシブ マイモ)に世界で最も早く取り組んでいる。5Gのスタンダードが完全に固まる前にすでに商用サービスとして提供している」とした。Massive MIMOは、利用者一人ひとりに専用の電波を割り当てることにより、人が多く集まる場所でもモバイル通信を滞らないようにするための技術だ。

「5Gの時代は必ずやってくる」と述べるソフトバンクグループの孫正義社長
「5Gの時代は必ずやってくる」と述べるソフトバンクグループの孫正義社長
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 加えて、ソフトバンクは5Gの主要機能を先取りしてやり始めており、2.5GHzを使ったTD-LTEにより、より早く実現できるとする。「5Gの時代になると、2.5GHzはプラチナバンドになると認識している。ソフトバンクが今まで蓄積した技術のメリットがたくさん得られる」(孫社長)。

 同社の2017年4~6月期は連結売上高が前年同期比2.8%増の2兆1860億円。営業利益は前年同期比50.1%増の4792億円だった。携帯子会社の米スプリントの営業利益が大幅に改善し1319億円だったほか、サウジアラビアなどと共同で設立した10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」の営業利益1052億円などが貢献した。

 SVFについて、孫社長は「ソフトバンクが当初からこういう組織体でありたいと描いていたモデルである『群戦略』の、一番の要になる」と説明する。ソフトバンクは単に投資事業をやるのではなく、世界中の起業家を結集した「起業家集団」として、産業革命の次の革命である「情報革命」を起こすとする。

「ソフトバンク・ビジョン・ファンドにより起業家集団を形成し、情報革命を起こす」と意気込む孫社長
「ソフトバンク・ビジョン・ファンドにより起業家集団を形成し、情報革命を起こす」と意気込む孫社長
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 記者からソフトバンクの組織論を問われると、「日本の財閥や、従来のベンチャーキャピタルとも違う。ソフトバンク独自の新しい概念である『同志的結合』に基づいて、投資先との戦略的シナジーを目指す」と答えた。

 具体的には、株式比率51%をとりにいったり、ソフトバンクのブランドで染めるのではなく、20から40%の株式を持ち、筆頭株主やそれに近い立場で、投資先の会社の経営に影響を与えるレベルのグループを構築していくという。「情報革命というビジョンを共有した上で、色々な業界にまたがったそれぞれの企業が自由に意思決定するような起業家集団を目指す」と孫社長は述べた。