ホテル世界最大手の米マリオット・インターナショナルは2017年8月1日、6月から米国内を中心に展開しているスマートフォン(スマホ)アプリを使ったチェックイン/チェックアウトサービス「SPG Mobile Check-In」について、対応ホテルを拡充したと発表した。日本国内でも「シェラトン」「ウェスティン」ブランドで展開する一部ホテルで同サービスが利用可能になる。従来は5~10分程度かかっていたフロントでのチェックイン/チェックアウトの所要時間を最短で1分未満に短縮し、宿泊客の待ち時間短縮とホテル従業員の業務効率向上を狙う。

 同社が2016年に買収した米スターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイド系列のホテル約1300カ所のうち、8月1日時点では500カ所弱が同サービスに対応。日本国内では、ウェスティンホテル東京と横浜ベイシェラトンホテルの2カ所で、同社のポイントプログラムの会員を対象に提供する。

米マリオットの「SPG Mobile Check-In」の操作画面
米マリオットの「SPG Mobile Check-In」の操作画面
(画像提供:横浜ベイシェラトンホテル)
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 利用者は事前にアプリで予約し、会員情報やクレジットカード番号を登録しておく。チェックイン当日は朝8時以降にスマホアプリでチェックインし、ホテルへの到着予定時刻などを送信。フロントでの手続きは、旅館業法で定められた本人確認と鍵の受け取りのみとなる。

 チェックアウト時は、宿泊費の明細書を印刷の代わりに電子メールで受け取るよう選択でき、この場合フロントでの手続きは鍵を渡すだけとなる。同サービスの開始に併せ、対応ホテルは専用カウンターを設けており、混雑時も一般の宿泊客の待ち行列に並ばずにチェックイン/チェックアウトできるようにしている。

 対応ホテルの1つである横浜ベイシェラトンホテルでは、7月27日から先行してサービスを開始。これまでに約30人が利用している。同サービスにより「フロント業務だけでなく、客室の清掃業務の効率化にも役立っている。これまで把握が難しかった各宿泊客の到着予定時刻が高い確度で分かるようになり、到着予定時刻の早い順に部屋を準備できるようになった」(横浜ベイシェラトン広報)とメリットを強調する。

対応ホテルではフロントに専用カウンターを設け、迅速に鍵を受け取れるようにしている
対応ホテルではフロントに専用カウンターを設け、迅速に鍵を受け取れるようにしている
(画像提供:横浜ベイシェラトンホテル)
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 マリオットはスマホによるチェックインのほか、スマホのBluetooth通信機能を使って宿泊する部屋を解錠可能にし、フロントでの鍵の受け渡しを不要にするサービス「SPG Keyless」を海外の一部ホテルで展開している。同サービスの国内での展開については「ホテル管理システム(PMS)と連動する部屋錠が国内で製品化されれば、遠からず対応できると考えている」(横浜ベイシェラトン広報)としている。

 国内のシティホテルは訪日外国人の増加などに伴い稼働率が高止まりしている。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、国内のシティホテルにおける2016年の平均客室稼働率は78.7%で、特に大阪府は88%、神奈川県は82.1%、東京都は80.8%とフル稼働に近い。

 2020年の東京五輪に向け稼働率は引き続き高い状態を維持するとみられ、ホテル運営会社にとってはサービス品質を確保しつつ業務の効率化を図ることが不可欠となっている。ITを活用してチェックイン/チェックアウトを迅速化する取り組みは、ホテル運営各社の間で今後も進みそうだ。