総務省は2017年7月28日、日本の情報通信産業の現状や将来予測、政策動向をまとめた「情報通信に関する現状報告」(情報通信白書)を公表した。

 IoT(インターネット・オブ・シングズ)と人工知能(AI)そのものが需要を創出するほか、日本企業が広く業務改革に活用することで経済成長を大きく押し上げるとの論旨を展開。2030年の日本のGDP(国内総生産)は725兆円と、内閣府の従来予測である593兆円を132兆円押し上げると予測した。2030年まで年平均で2.4%の経済成長率を達成できるという。

(出所:総務省)
(出所:総務省)
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 白書は世界で稼働するIoTのデバイス数を2016年で173億個と推定。2020年には300億個と2倍近くに増えると予測した。これに対して、スマートフォンは低成長期に入るという。世界出荷台数は2016年の実績値が14億3800万台で、2020年でも16億6500台である。

 IoTやAIの普及を背景に、多くの日本企業が2つの技術を組み合わせて企業改革に乗り出せば、経営が効率化するだけでなく企業のICT投資が増え、経済成長を押し上げると主張。IoT/AIを本格導入し企業改革を押し進める「先進企業」が現状の6%から51%に増えるなどと仮定した「経済成長シナリオ」を打ち出した。

 ベースとなる日本のGDPや経済成長率のシナリオは内閣府が経済財政諮問会議に提出している試算を採用。内閣府試算のうち、中長期の成長が現在の足下と同じ「実質成長率1%弱、名目成長率1%半ば」にとどまるベースラインのシナリオだと、実質GDPは2016年実績の522兆円から2030年は593兆円で、年平均成長率は0.9%にとどまる。

 一方、IoTによる企業改革が進む経済成長シナリオだと年平均の経済成長率は2.4%に高まる。2030年の実質GDPは725兆円と内閣府のベースラインのシナリオから132兆円の押し上げ効果があるとした。