「サイバーセキュリティが民主主義の脆弱性になっている」――。米Facebookの最高セキュリティ責任者であるAlex Stamos氏は2017年7月26日(米国時間)、「Black Hat 2017」の基調講演でそう訴え、同社がインターネット全体のセキュリティ強化や、米国の選挙システムに対するサイバー攻撃の防衛に貢献する姿勢を示した。

 Black Hatは毎年夏に米ラスベガスで開催されている世界最大のセキュリティカンファレンスだ。FacebookのStamos氏は基調講演で、国家機関などによるサイバー攻撃が民主社会の脅威になっていることを指摘し、この状況を改善するために同社として社会全体やインターネットのサイバー防衛に積極的に貢献していくとした。

写真●米Facebookの最高セキュリティ責任者であるAlex Stamos氏
写真●米Facebookの最高セキュリティ責任者であるAlex Stamos氏
[画像のクリックで拡大表示]

 具体的には今回、三つの取り組みを発表した。第一は、インターネットを支えるオープンソースソフトウエア(OSS)のバグを修正したり、インターネット全体のセキュリティを強化したりする研究を表彰する制度の強化だ。同社はOSSに関するバグ報奨金制度である「Internet Bug Bounty」プログラムや、セキュリティ研究の表彰制度「Internet Defense Prize」を運営しているが、この賞金総額を100万ドルに増やす。

 同社はこれまで総額25万ドルの賞金を研究者に支払ってきたといい、金額を大幅に増やす。セキュリティ研究者のモチベーションを高めることで、ボランティアベースの活動に多くを依存しているインターネットのセキュリティを高める狙いだ。

2018年の米国中間選挙におけるサイバー防衛に資金協力

 第二は、米国の選挙システムに対するサイバー攻撃の防御プロジェクトへの出資だ。名称は「Defending Digital Democracy Project(デジタル民主主義防衛プロジェクト)」で、米ハーバード大学の「Belfer Center」と連携し、2018年に予定されている米国の中間選挙に際して、選挙システムの防衛力を高める。米国の選挙システムに関しては、2016年の大統領選挙に際して、国外勢力からのサイバー攻撃があったと報道されている。

 第三は、セキュリティ人材のダイバシティー(多様性)に関する貢献だ。プログラミング教育機関の「CodePath」と提携し、大学向けのセキュリティ教育を強化していく。セキュリティ教育のすそ野を広げることで、有力大学を卒業した男性に偏りがちなセキュリティ業界の多様性を高めていくとしている。