CM制作大手のAOI Pro.(アオイプロ)は2017年7月26日、VR(仮想現実)空間を使って映像の視聴時の反応を調査・分析する新サービス「VR ON AIR TEST(オンエアテスト)」を発表した。視聴者が装着するセンサーから生体データを取得し、反応を科学的に把握できる。まずは特定のCM制作案件で活用。今後、映像制作会社やCMを出稿する一般企業向けへの販売を目指す。

「VR ON AIR TEST」を利用する様子。手前のモニターにCMを見ている最中の脳波や心電心拍などのデータが表示される。白いヘッド・マウント・ディスプレーは視線を捉える機能を持つ
「VR ON AIR TEST」を利用する様子。手前のモニターにCMを見ている最中の脳波や心電心拍などのデータが表示される。白いヘッド・マウント・ディスプレーは視線を捉える機能を持つ
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 オンエアテストは、CM完成後に視聴者に見てもらって反応を調べるテストのこと。被験者はヘッド・マウント・ディスプレーを装着した状態でCMを視聴する。従来のテストに比べて没入感を得やすく、映像のどこを見ているかを調べる「視線トラッキング」の精度が高まるメリットがある。

被験者が装着するセンサー。黄色い部分を腕に巻いて手に持つ体温・圧力計(上)と、頭部に付ける脳波・心電心拍計
被験者が装着するセンサー。黄色い部分を腕に巻いて手に持つ体温・圧力計(上)と、頭部に付ける脳波・心電心拍計
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 被験者は同時にセンサーを装着し、生体データ(脳波、心電心拍、体温、圧力)を測定する。

ダッシュボード画面。視線の動きや「集中度」「リラックス度」の推移などが分かる
ダッシュボード画面。視線の動きや「集中度」「リラックス度」の推移などが分かる
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 このデータをクラウド環境に蓄積し、ダッシュボード形式で表示する。例えば、15秒間のCMの間に、どの部分に視線が集まり、生体データを基にした「集中度」「リラックス度」などがどのように推移するかが分かる。

 現在は「プロトタイプ」という位置づけで、実用化にはまだハードルがある。例えば生体データのうち、体温は15秒間のCMを視聴している間はほとんど変化がないという。AOI Pro.の吉澤貴幸・体験設計部長は「体温はCMの分析には使いにくいが、ドラマのような長いコンテンツの分析に役に立つかもしれない。実用化するには、こうしたデータとノウハウをもっと蓄積する必要がある」と話した。

3カ月で超高速開発

 サービス開発にはアルティテュード(東京・港)、BlueMeme(東京・品川)、FOVE(東京・千代田)、ニューロスカイジャパン(東京・中央)、アップフロンティア(東京・渋谷)、ブライセン(東京・中央)が参画した。AOI Pro.は2017年3月にこれらの企業と共同でVRをビジネス活用するためのサービスを展開するブランド「VR Insight」を立ち上げており、VR ON AIR TESTは第一弾となる。

 実質3カ月という短期間でシステムを開発するために、BlueMemeが扱う超高速開発ツール「OutSystems Platform」を採用。コードを書かずにダッシュボード画面表示プログラムなどを自動生成する手法を取った。