無線LANの業界団体であるWi-Fi Allianceは2017年7月26日、発表会を開催し、マーケティング担当バイス プレジデントのケビン・ロビンソン氏がWi-Fiの最新状況を説明した。

Wi-Fi Allianceマーケティング担当バイス プレジデントのケビン・ロビンソン氏
Wi-Fi Allianceマーケティング担当バイス プレジデントのケビン・ロビンソン氏
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 ロビンソン氏はJALの機内や都内のバスにおけるWi-Fiサービス提供などの国内事例を紹介した。そして2020年の東京オリンピックがWi-Fiを含む新しい技術を提供するチャンスだと指摘し、政府が2020年までに学校、官公庁、美術館など公共の場所に3万カ所のWi-Fiスポットを設置する目標を立てているという話題を紹介した。

 またロビンソン氏は5GとWi-Fiの関係性について「次世代の接続(5G)に移行しても、Wi-Fiは重要な役割を維持することになる。セルラーを補完する重要な基盤技術であり続ける」と説明した。Wi-Fiは最も成功している小型セルの技術で、5Gのデバイスの密度要件に十分対応できるアーキテクチャーを持っているという。5Gで必要とされる能力に対応している既存のWi-Fi機能として802.11ac、MU-MIMO、WiGigを挙げ、さらに2020年に向けては次世代の802.11axが普及してくると説明した。

 ロビンソン氏は、ネットワークの密度が高くなるとマネージドネットワークの役割がさらに重要になると指摘。マネージドWi-Fiネットワークに向けた「Wi-Fi CERTIFIED Vantage」プログラムを紹介した。これはWi-Fi CERTIFIED PasspointとWi-Fi CERTIFIED acをベースとしており、Wi-Fiアクセスポイントに対して手軽な認証とセキュアなアクセスを提供するものである。Wi-Fi CERTIFIED Vantageでは今後新機能を提供し、さらにモビリティを向上させる。「今後もユーザーとサービス事業者の双方にメリットがある機能を投入する予定だ」(ロビンソン氏)。これらの新機能は802.11k/11v/11r/11aiをベースとしたものになる。

 また同日、Wi-Fi Allianceは、ワイヤレスディスプレイに関するプログラムであるWi-Fi CERTIFIED Mircastに新機能を加えたことを発表した。ロビンソン氏は会見で、「このアップデートにより、Miracastに対応するデバイスは高精度のコンテンツをサポートし、4K ウルトラHDのコンテンツ(の表示)もWi-Fi経由で可能になる」と説明した。また新しい音声・ビデオのコーデックに対応することで、バッテリーの持ちが長くなるという。

Wi-Biz小林会長も登壇し「格安SIMはフリーWi-Fiがあったから普及した」

 発表会には無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)会長の小林忠男氏が登壇。国内のWi-Fi最新状況について説明した。小林氏は「この1年間で、通信事業者のWi-Fiスポットのほかに、自治体、ホテル、教育機関などでフリーWi-Fiが急拡大した。また企業や家庭でもWi-Fiが広がり、“光の先のWi-Fi”が当たり前になったと思う」とコメント。またWi-Fiを使ったIoTへの取り組みも、この1年間でかなり広まっており、官民がトライアルを含めIoTのネットワークを作り始めていると説明した。

 また格安SIMとWi-Fiの関係について言及し、「個人的見解だが、コンビニや駅、空港などでWi-Fiスポットが使えるようになっていなければ、格安SIMが出たとしてもこれだけのユーザーが付くことはなかったはずだ」と述べ、格安SIMを使いつつ大容量コンテンツはフリーWi-Fiでダウンロードする使い方が格安SIM普及の背景にあるとの見方を示した。