スタートアップ企業の事業育成を手がける米All Turtlesが2017年7月24日、東京都内で会見を行い、「2017年秋に東京オフィスを稼働させ、2018年1月1日に支援チームの募集を始める」と発表した。2018年4月には最初の支援5チームを決定するという。

All Turtlesの創業者であるPhil Libin氏
All Turtlesの創業者であるPhil Libin氏
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 同社は米Evernoteの共同創業者で元CEO(最高経営責任者)のPhil Libin氏が立ち上げた「スタートアップ支援スタジオ」。ここで言うスタジオは、「ハリウッドの映画産業をモデルにした」(Libin氏)ものであり、企業経営に必要な専門家が集まり、クリエイターによる新しい製品やサービスの開発を支援する。クリエイターは経営や資金調達、リクルーティングなどをスタジオに任せることができる。「小説家が必ずしも出版社を作るわけでもなく、音楽家が音楽会社を作るわけでもない」とLibin氏は指摘。クリエイターがモノ作りに集中できる環境を提供することの意義を強調した。

 同社にはLibin氏のビジョンに賛同したデジタルガレージや米ゼネラル・カタリストといった企業のほか、楽天の三木谷浩史氏やフランスの起業家であるザビエル・ニール氏などが合計2000万ドル以上を出資している。

 同社が最初に支援するのは、AI(人工知能)関連のスタートアップ企業。既に11社を支援しており、顔ぶれは消費者向けから企業向けまで幅広い。次に力を入れる分野として、量子コンピューティング、宇宙関連のスタートアップ企業を挙げた。

 東京オフィスは2017年2月に開設したサンフランシスコ本社に続くもので、ほぼ同じタイミングでパリにもオフィスを設けるという。

 日本を新しい拠点とした理由として、Libin氏は日本の「金継ぎ」の文化を引き合いに出した。金継ぎとは、壊れた陶磁器をつなぎ合わせ、金で装飾して修復することで、破損前よりも価値を高める伝統技法。金継ぎから「壊れることを前提にして準備しておくこと」などを学んだというLibin氏は、「金継ぎの文化を生んだ日本は、(リスクを取って事業創出に取り組む)スタートアップ企業を生み出す土壌がある」と語り、これが日本を拠点に選んだ理由だとした。