Preferred Networks(PFN)は2017年7月24日、同社の事業方針や機械学習の技術動向に関する説明会を開催した。西川徹社長 CEO(最高経営責任者)は「ロボットをはじめ工作機械や製造業の世界を学び、機械学習とのシナジーを追求していく」との方針を示した。「産業用ロボット」をはじめ、「ライフサイエンス」「自動運転」の3分野を事業の柱に据えるという。

PFNの西川徹社長
PFNの西川徹社長
[画像のクリックで拡大表示]

 産業用ロボット分野ではファナックとの協業を進める。ロボットで部品をピッキングする「バラ積み取り出し」や「故障予知」、温度で変わる工作機械の精度を補正する「熱変位補正」などに、PFNの深層学習などの技術を生かして、実用化を目指す。深層学習を活用する企業が増える中、「制御の分野でPFNの強みを活かす」(西川徹社長)という。

東京オフィスでロボットを使った開発が進む
東京オフィスでロボットを使った開発が進む
[画像のクリックで拡大表示]

 続いて岡野原大輔副社長が登壇し、機械学習の研究トレンドが「教師あり学習」から「半教師あり学習」「教師なし学習」そして「強化学習」へと変わりつつあると紹介した。「より困難で現実世界に即した研究テーマに近づいている」(岡野原副社長)。

 以下の3点も実現すべき課題とした。学習の手法それ自体を学習する「メタ学習」、ニューラルネットワークに流れる情報を動的に制御する「注意機構」を応用した複雑なタスクの実行、そして構築した機械学習システムの信頼性を確認する手法の確立だ。岡野原副社長は「ミッションクリティカルな課題で性能保証できるかどうかかカギになる」と語る。

PFNの岡野原大輔副社長
PFNの岡野原大輔副社長
[画像のクリックで拡大表示]

 PFNの深層学習フレームワーク「Chainer」の現状も紹介した。担当する齋藤俊太氏は、ChainerMNを用いた分散深層学習がTensorFlowなど他フレームワークの分散学習機能と比較して高速である点を紹介した。ある条件下の比較において、ChainerMNを用いた分散学習が要した時間は、TensorFlowの分散学習機能を用いた場合と比べ、およそ5分の1だったという。

 齋藤氏は「深層学習フレームワークの開発では、最新の論文で提案された新機能を素早く取り入れることが必須」と説明。Chainerのメジャーアップデートを3カ月ごとに実施する方針を示した。「Chainer v3」は2017年9月26日に提供予定で、Windowsを公式の動作対象OSに加えた。

■変更履歴
記事公開当初、Preferred Networksの略称表記に誤りがありました。ChainerとTensorFlowの学習時間を比較する記述について、分散学習の場合に限った表現に変更しました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/7/25 18:00]