野村証券とジーエフケーマーケティングサービスジャパン(GfK Japan)は2017年7月19日、人工知能(AI)とビッグデータを活用した経済指標をそれぞれ開発し試験公表したと発表した。手作業で集計している既存の政府統計の代替を目指しており、集計の自動化により公表の前倒しや週次での公表など既存統計にない利便性を提供する意向だ。

3指標を試験公表している経済産業省のWebサイト「BigData-STATS」
3指標を試験公表している経済産業省のWebサイト「BigData-STATS」
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 野村証券は「SNS×AI景況感指数」と「SNS×AI鉱工業生産予測指数」の2種類を、GfK Japanは「POS家電量販店動向指標」を開発した。いずれも経済産業省が2016年9月から実施している「ビッグデータを活用した新指標開発事業」により開発したもので、民間からは2社のほかPwCあらた有限責任監査法人が参画している。

 SNS×AI景況感指数は、Twitterのツイートから景気や物価に関する言葉を含むものを1日当たり500件ほど抽出。あらかじめ景気ウォッチャー調査や中小企業景況調査のコメントで学習済みのAIを使い、500件のツイートを「ポジティブ(景気が良くなる)」「ネガティブ(景気が悪くなる)」の二者択一で分類する。今回試験公表している同指数は、安定性と速報性のバランスを取り直近12週の移動平均を週次で公表する。2014年7月以降のツイートを基に算出した同指数と既存のベンチマーク指標である「消費者態度指数」との相関係数は0.77、「景気ウォッチャーDI」との相関係数は0.79。

 SNS×AI鉱工業生産予測指数も同様に、Twitterのツイートから仕事に関するものを抽出。そのなかに仕事が増えたことを意味するツイートがどの程度含まれているかを調べる。併せて、製造工業生産予測指数、東証株価指数(TOPIX)、ドル/円の為替レートを加味して週次で算出する。2015年1月以降のツイートを基にしたSNS×AI鉱工業生産予測指数と、ベンチマークとなる既存指標「鉱工業生産指数」の確報値との相関係数は0.90。

 POS家電量販店動向指標は、国内の家電量販店約3000店の実売データを集約。ベンチマークとなる既存指標「商業動態統計 丁2調査 家電大型専門店販売統計」の集計定義にそろえる形でデータを加工、指数化して週次で公表する。既存指標と比べると、家電量販店のネット通販やアウトレット店、店舗で販売される家電以外の製品の実売データが含まれない一方、家電量販店のフランチャイズ店舗の実売データが含まれるといった違いがある。

 これら3種類の指標は、経済産業省が新たに開設したWebサイト「BigData-STATS」で、まずは2017年10月末まで公表。意見募集を経て2018年1月から再度公表する計画だ。