分散ストレージを手がけるスキャリティ・ジャパンは2017年7月13日、スケールアウト型の分散ストレージソフトの新版「Scality RING7」の提供を始めた。バージョニング機能や保存場所を指定する機能を追加し、セキュリティ被害からの復旧や意図しないデータの持ち出しなどを防げるという。

 Scality RING7はソフトウエアで分散ストレージを構築する、いわゆるSDS(ソフトウエア・デファインド・ストレージ)ソフト。サーバーを追加するだけで容量を拡張できる。ファイルとして格納したデータをプログラムからオブジェクトとして取り出したり、オブジェクトとして投入したデータをファイルとしてユーザーがアクセスしたりできる。

 新版ではファイルとオブジェクトのバージョニング機能やデータを配置する場所を指定する機能、非同期のレプリケーション機能などを追加した。バージョニングはファイルを不正に暗号化して復号のための金銭を要求する「ランサム(身代金)ウエア」への対抗措置として、データを配置する場所の指定は国外へのデータ持ち出しを禁じるような法令を遵守させる手段として、それぞれ活用できるとする。

 国内ではブロードバンドタワーや日本ヒューレット・パッカードなどの代理店を通じて販売する。最小構成時の容量は200Tバイトで、価格は個別見積もり。

 RING7の投入に合わせて、7月12日にマルチクラウドにデータを保存できる「ZENKO」をオープンソースソフトウエア(OSS)として公開した。オブジェクトストレージのクラウドサービス「Amazon S3」互換のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を使って、Amazon S3やMicrosoft Azureといった複数のクラウドサービス、Dockerデータボリュームなどのローカルストレージにデータを保存できる。

 「特定のAPIに依存せず、ユーザーがニーズに応じて、RINGやAmazon、Azure、プライベートクラウドなどを選択できる環境を整えたい」。米スキャリティのポール・ターナーCMO(最高マーケティング責任者)はZENKO公開の狙いをこう話す。

米スキャリティのポール・ターナーCMO(最高マーケティング責任者)
米スキャリティのポール・ターナーCMO(最高マーケティング責任者)
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 2017年9月には同社のRINGおよびGoogle Cloud Platform(GCP)への対応を追加する予定。マルチクラウド間のデータを検索する「Clueso」やマルチクラウドへデータを非同期で複製する「Backbeat」などの機能も追加する。

 2017年末をめどに、商用版の「Enterprise Edition」を提供する。Enterprise版では、OSS版の機能に加えてCIFS/NFSによるファイルサーバーへの格納やスケールアウト機能などを追加するという。

マルチクラウドにデータを保存できる「ZENKO」の構成
マルチクラウドにデータを保存できる「ZENKO」の構成
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