米Microsoftは2017年7月9日(米国時間)、「Office 365」や「Windows 10」、セキュリティ管理サービスなどを組み合わせた新しいクラウドサービス「Microsoft 365」を発表した。大企業だけでなく中小企業にも、月額課金制のWindowsライセンスやセキュリティ管理サービスを売り込むのが狙いだ。

 同日から米ワシントンDCで開催したパートナーカンファレンス「Microsoft Inspire」でMicrosoft 365を発表した(写真1)。大企業向けの「Microsoft 365 Enterprise」と中小企業向けの「Microsoft 365 Business」があり、内容がわずかに異なる。

写真1●米Microsoftのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)
写真1●米Microsoftのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)
[画像のクリックで拡大表示]

 大企業向けのMicrosoft 365 Enterpriseは、2016年に発売した「Secure Productive Enterprise」の名称を変更したもの。オフィスソフトや電子メールなどのクラウドサービスである「Office 365 Enterprise」と、セキュリティ強化版のクライアントOSである「Windows 10 Enterprise」、Windowsパソコンやモバイルデバイスのセキュリティ管理サービスである「Enterprise Mobility + Security(EMS)」で構成する。価格はオープンで、米国での実売価格は最小構成の場合で1ユーザー当たり月額34ドル前後である。

 中小企業向けのMicrosoft 365 Businessは新規のサービスで、8月2日からサービスの提供を開始する。「Office 365 Business Premium」や「Windows 10」へのアップグレードライセンスに加えて、EMSの簡易版となるセキュリティ管理サービスを月額課金制で提供する(写真2)。このセキュリティ管理サービスでは、Windows 10搭載パソコンのデバイス管理やオフィス文書のリモート削除などが可能である。システム管理者はMicrosoftが提供するWeb管理コンソールを使って、業務で利用するWindows端末のセキュリティ設定を一元管理できるようになる。価格は1ユーザー当たり月額20ドルだ。

写真2●Microsoft 365 Businessに含まれるサービスや機能
写真2●Microsoft 365 Businessに含まれるサービスや機能
[画像のクリックで拡大表示]

 これまでMicrosoftはセキュリティ管理のクラウドサービスを主に大企業向けに販売していた。今回、Microsoft 365 Businessを追加することによって、中小企業にも販売対象を広げた。また近年Microsoftはパートナーに支払うインセンティブの算出基準を、ソフトウエアライセンスの販売額ではなく、ユーザー企業によるサービスの利用量(コンサンプション)に移行している。Windows OSのライセンスについても、売り切り型や複数年、年額課金の販売ではなく、クラウドサービスのような月額課金での販売へと移行していることになる。

 Microsoftのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)はMicrosoft Inspireの基調講演で、同社の製品がパソコン用OSやオフィスソフトからサーバーやクラウド、そして企業のデジタル変革を手助けするプラットフォームや業務アプリケーションへと広がるにつれて、システムインテグレーターなど同社のパートナーのビジネス機会も拡大していると強調した。Microsoftによれば、同社が1ドルを売り上げるごとに、パートナーに9.01ドルの売り上げをもたらしているという。

 Microsoftのクラウドサービスの販売パートナーも6万4000社にまで増えており、Microsoftのクラウドパートナーの数は、「Amazon Web Services」と「Google Cloud」「Salesforce.com」のクラウドパートナーを合算した数を上回ると主張している。今回のMicrosoft Inspireには1万7000人のパートナーが集まった。