サッポロホールディングスは2017年7月6日、野村総合研究所(NRI)の人工知能(AI)システム「TRAINA(トレイナ)」を同年末までに本格導入すると発表した。人事・総務・経理・情報システムなど間接部門に対するグループ内からの問い合わせ対応をAIに代行させ業務効率化を図るもので、先行して実施した実証実験では問い合わせの45%をAIが回答できることを確認したとしている。

サッポロホールディングスが試験導入した「TRAINA」による問い合わせの画面。補足質問により質問者の意図を確認のうえ、FAQの内容を基に回答や関連する申請フォームを提示する
サッポロホールディングスが試験導入した「TRAINA」による問い合わせの画面。補足質問により質問者の意図を確認のうえ、FAQの内容を基に回答や関連する申請フォームを提示する
(画像提供:サッポロホールディングス)
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 実証実験では、グループの間接部門機能を担うサッポログループマネジメントにTRAINAを試験導入。人事異動などに関連して間接部門への問い合わせが増える2017年3~4月に、人事・経理担当の10人がグループ社員からの問い合わせ対応に試用した。

 具体的には、グループ社員がPCで問い合わせ画面を開き、チャット風の画面に質問を入力。TRAINAはFAQのデータベースから質問内容に応じた回答を提示する。質問内容によっては、TRAINAがグループ社員の質問意図を特定するために補足質問をして、提示する回答を絞り込んでいく。質問内容が社内申請にまつわるものであれば、TRAINAが申請画面へのリンクを示すとともに、グループ社員の社員番号やログイン名などを自動入力する。

 従来はグループ内からの問い合わせにメールや電話で対応していたが、間接部門からは「複雑な問い合わせに対応する業務の負荷が高い」、利用者からは「回答待ちの時間が発生する」「不満が解決されにくい」「申請手続きが煩雑で分かりにくい」といった不満の声が出ていた。

 TRAINAを活用することで、間接部門への問い合わせのうち45%は人手を介さずTRAINAから回答を示せると分かったほか、FAQの検索にかかる時間も従来の平均3分45秒から同30秒へと大幅に減少した。

TRAINAから提示される申請フォームは、質問者の社員番号やログイン名などをあらかじめ自動入力した状態で提示され、質問者の入力の手間を軽減している
TRAINAから提示される申請フォームは、質問者の社員番号やログイン名などをあらかじめ自動入力した状態で提示され、質問者の入力の手間を軽減している
(画像提供:サッポロホールディングス)
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 社内の問い合わせ業務に対するAI活用は、IT部門の担当者が社内公募制度で提案したもので、2016年6~7月ころに検討を開始。複数のAIシステムを検討したが「NRIは日本語のテキストマイニングツール『TRUE TELLER』を提供しており日本語に強いと感じた。また、他社のAIシステムのようにフォーマットの整った質問と回答の学習データを事前に用意しなくて済む」(提案したサッポログループマネジメント グループIT統括部の河本英則課長代理)ことからTRAINAを選択したという。

 実証実験の結果を受け、本格導入時には対象を人事・総務・経理・情報システムの各部門に対する問い合わせ業務全般へと広げる。本格導入に向け、現在は300~400件のFAQデータベースの件数を増やして回答可能な質問の幅を広げるとともに、スマートフォンから簡単に問い合わせられるよう操作画面の改修などを進める。「ITに関する問い合わせをTRAINAで回答することで社内のITコンタクトセンターのランニングコストを削減するなどして、TRAINAの導入コストは2年程度で回収できるとみている」(河本課長代理)。

 併せて、国内の酒類事業を担う中核子会社のサッポロビールにおいても、2017年末までにTRAINAの導入に向け実証実験を始める。これまではマーケティング部門の担当者が、自社で販売している酒類などの製品について「特徴が知りたい」「規格書がほしい」といった問い合わせを受けていたが、これをTRAINAに代行させる計画だ。