ヴイエムウェアは2017年6月27日、HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)の中核を成すソフト「VMware vSAN」(旧称Virtual SAN)について、直近の取り組みを説明した。2017年7月1日付で保守サポート部隊を再編し、vSANの専任チームを立ち上げる。

 従来は、サーバー仮想化ソフトやネットワーク仮想化ソフトなどを含めたデータセンター関連の仮想化製品群の全体をカバーする保守部隊の中に、vSANの担当者がいた。これを改め、新規に管理者を付けてvSANの保守サポートを専任で担当する組織を作る。2017年4月にはこれに先立ち、パートナー担当部隊にvSANの専任エンジニアチームを設置済みである。

 背景には、HCIの需要が増えている状況がある。ヴイエムウェアのイベントでアンケートを実施したところ、顧客の約20%が1年以内にHCIの導入を予定しており、顧客の約55%が既に導入済みまたは2年以内に導入を計画している。調査会社のIDC Japanも、HCIの支出額は2016年から2021年にかけて年平均31.2%で成長すると予測している。

 「中堅中小企業のvSAN需要は大きい」と、ヴイエムウェアでソリューションビジネス本部本部長を務める小林泰子氏は指摘する。「中堅中小企業は、少ない人数でITリソースを管理しなければならない」(小林氏)からである。管理コンソールのVMware vCenterから、サーバー仮想化ソフトのVMware ESXiと同様にvSANを管理できるので、運用管理が容易としている。また、最小2ノード構成のスモールスタートができる点も中小企業に向く。

ヴイエムウェアでソリューションビジネス本部本部長を務める小林泰子氏
ヴイエムウェアでソリューションビジネス本部本部長を務める小林泰子氏
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 vSANとは、サーバー仮想化ソフトであるVMware ESXiのカーネルに組み込まれた分散ストレージソフトである。ストレージにアクセスする仮想サーバー単位で、性能やデータ保護機能などのストレージ要件を設定できる。他社のHCI製品の多くが仮想サーバーの1台をストレージとして使うのに対して、vSANはサーバー仮想化ソフトにストレージ機能を組み込むことによって、性能面や運用管理面に優れるとしている。

 vSANの用途については、代表的なVDI(デスクトップ仮想化)だけでなく、広い用途で汎用ストレージとして使われているという。米VMwareでストレージ&アベイラビリティ担当上級副社長兼ゼネラルマネージャを務めるヤンビン・リー氏も、「パブリッククラウドよりも早い成長でHCIが伸びている。従来型のストレージ市場は縮小していく」と指摘する。

 会見では、国内のパートナー企業によるvSANを利用したHCI製品サービスの例をいくつか紹介した。「Dell EMC VxRail」のほか、サーバーベンダーによるHCIアプライアンスの例として富士通の「PRIMEFLEX HS」がある。また、SIベンダーによるHCIシステム構築サービスの例として大塚商会の「HCIスターターキット」、SIベンダーによるHCIパッケージシステムの例として日立システムズの「ハイパーコンバージド・ソリューションSupermicro+VMware vSAN」などを紹介した。VMwareベースのパブリッククラウドサービスでもvSANが使われているという。

HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)の提供形態
HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)の提供形態
(出所:ヴイエムウェア)
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