日本ワムネットは2017年6月22日、大容量ファイルを高速伝送できるデータ転送サービス「DIRECT! EXTREME」を発表した。従来のサービスの転送技術を刷新し、米マイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」上で構築。実測で約7.8倍の高速化を実現したという。同年8月に提供を始める。

高速・大容量なデータ転送サービス「DIRECT! EXTREME」
高速・大容量なデータ転送サービス「DIRECT! EXTREME」
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 DIRECT! EXTREMEは、Tバイト級のデータ転送に向くデータ転送サービス。ユーザーごとに独自アドレスを設け、DIRECT! EXTREMEサービス内でデータを転送する。従来サービスがTCPの通信路を複数設ける「マルチセッション」で高速化していたのに対し、DIRECT! EXTREMEはUDPを利用可能な「高速モード」を用意した。一般に、TCPは送信先の受信確認を待つ確認応答の仕様から長距離伝送では転送速度が伸び悩むが、UDPは確認応答がないため高速にパケットを送信できる。同社による実測では、1Gバイトのファイル転送に掛かる時間が従来は173秒なのに対して高速モードでは22秒だったとした。

 高速モードの利用には専用クライアントソフトが必要。UDPを利用できない環境ではTCPマルチセッションで動作するが、実測で従来のTCPマルチセッションより高速という。対応OSはWindows 7以降、Mac OS X 10.6(Snow Leopard)以降。Webブラウザーで利用する場合は「通常モード」となる。オプションとして送信先でのファイル印刷などを指示できる「自動化サーバ」機能を用意する。

 1ファイル当たりの容量上限は2Tバイト。価格は総転送量別の月額課金で、50Gバイトで月額3万円、100Gバイトで月額5万円、500Gバイトで月額20万円。初期費用は5万円で、最低契約期間は3カ月。500Gバイト超は個別見積もり。

 サービスはAzure上に構築した。「複数のパブリッククラウドを検証した結果、Azureが総合面で優位だった」(日本ワムネットの石澤幸信社長)という。Azure以外に、Amazon Web ServicesやGoogle Cloud Platformといったパブリッククラウドで、同構成で性能や運用を検証したとする。

日本ワムネットの石澤幸信社長
日本ワムネットの石澤幸信社長
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 従来の「Direct!」サービスは、米ワム!ネット(現在の米センチュリーリンク)のデータ転送サービスを国内展開したもの。1999年に当時の米ワム!ネットと住友商事が合弁で日本ワムネットを設立して提供してきた。Direct!サービスは2018年春までにサービスを終了する計画。既存ユーザーにはDIRECT! EXTREMEへの移行を促す。「2018年春に米センチュリーリンクとの契約を解除する予定」(石澤社長)だ。刷新に合わせて、同社による直販以外に代理店経由やOEM提供での拡販体制を整える。3年後に年間5億円の売上規模を見込む。