自動車部品大手のデンソーが量子コンピュータの応用研究を進めていることが日経コンピュータの取材で2017年6月21日までに分かった。自動運転の支援など、大量の計算が必要な分野での利用を想定しているとみられる。人工知能(AI)などに続き、自動車メーカーや部品メーカーが競争力を高める目的で量子コンピュータの実験に取り組む動きが広がる可能性がある。

 量子コンピュータは米IBMや米グーグルなどが試作機の開発を進めている。数年以内に実用化される可能性があり、処理性能は最新鋭のスーパーコンピュータの9000兆倍にも達するとの見方がある。高い性能を持つことから「夢の計算機」とも言われる。

 デンソーはカナダのディー・ウエーブ・システムズがいち早く商用販売している量子コンピュータ「D-Wave」シリーズの利用を念頭に研究を進める。D-Waveは「量子アニーリング型」と呼ばれるタイプの量子コンピュータで、複数の拠点を回る際の最短経路を探す「巡回セールスマン問題」など特定の問題解決に向く。自動車業界ではドイツのフォルクスワーゲンもD-Waveを使った研究をしている。

 デンソーはAIにも使われる「深層学習」の技術を活用して計算を高速化するアルゴリズム開発などで既に成果を得たもよう。共同研究者として早稲田大学の田中宗助教と東北大学の大関真之准教授が協力している。

 研究は自動運転車の実現を見越した経路探索など、実用化を想定して活用分野を模索している。デンソーは量子コンピュータの活用に向けて研究している事実について認めた。