佐賀県武雄市などをサービスエリアとするケーブルテレビ事業者であるケーブルワンは2017年6月21日、武雄市が発する防災行政無線の音声情報を、コミュニティチャンネルのデータ放送とスマートフォンアプリに同時配信し、視聴者が繰り返し聞くことができるサービスを同日に開始したと発表した。

 地方自治体の防災行政無線を屋内にいる住民に確実に届ける手段として、ケーブルテレビ局が提供するコミュニティチャンネルのデータ放送が注目され、取り組みが行われている。今回は加えて加入者に無料提供しているスマホアプリにも同時に自動配信する。全国初の取り組みといい、ロジックス、ミハル通信、メディアキャストが開発に協力した。

 開発システムでは、武雄市防災危機管理担当者が、防災行政無線で告知する際に、ケーブルワンが開発した「音声ファイル自動作成システム」のボタン操作を行うことで、システム上で音声ファイルが自動生成される。この音声ファイルは、ケーブルワンのデータ放送システムに転送され、コミュニティチャンネル画面に防災情報が登録されたことを強制的に自動表示する。視聴者がテレビリモコンの「青」ボタンを操作すると、音声再生画面へ遷移し、防災行政無線の音声がテレビから聞こえる。音声は登録後30分間、繰り返し再生される。

図1●ケーブルイテレビのコミュニティチャンネルのデータ放送から音声再生
図1●ケーブルイテレビのコミュニティチャンネルのデータ放送から音声再生
(出所:メディアキャストの発表資料から)
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 テレビ画面には「武雄市防災情報メール(防災ネットあんあん)」の文字情報を表示する。同時に、ケーブルワンの地域情報アプリへプッシュ通知され、防災行政無線音声情報ページから音声が再生できる。なお、30分間に複数の情報がある場合、テレビでは順番に再生される。アプリでは、聞きたい情報を選択して再生できる。

 武雄市内は、これまで防災行政無線で各種の安心安全情報を放送してきた。しかし集合住宅の高層化、建築構造の密閉化といった事情もあり、市民から「台風や大雨などの災害時には室内にいるので聞こえず、聞き逃す場合も多い」などの声が多く寄せられていたという。開発システムを使えば、防災無線専用の戸別受信端末の設置が不要で、安価に宅内まで音声情報のままの形で安心安全情報を届けられるようになる。

 佐賀県武雄市は水害常襲地帯であり、ケーブルワンでは風水害発生時に「災害情報」の放送も行ってきた。2014年には、第2コミュニティチャンネルで国土交通省河川監視カメラや水害常襲ポイントの情報カメラなどを利用した「防災チャンネル」の運用も開始した。こうした取り組みの一環で、2016年4月には、災害時に必要となる情報をスマートフォンで見ることができる「ケーブルワン地域情報アプリ」の提供を開始し、スマートフォンのGPS機能と連動したルート案内機能も搭載した。同アプリでも行政無線の情報の一部をテキスト化し掲載していたが、今回は告知とほぼ同時に音声再生で内容を確認できるようになった。

図2●地域情報アプリから音声再生
図2●地域情報アプリから音声再生
(出所:メディアキャストの発表資料から)
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