インターネットイニシアティブ(IIJ)は2017年6月19日、水田に張る水の量を遠隔から管理する「ICT水管理システム」の実証実験を開始すると発表した。IoT(Internet of Things)やLPWA(Low Power, Wide Area)を活用し、農業法人が稲作で水を管理する作業コストを半減したいとする。IIJは静岡県交通基盤部農地局や他企業などと「水田水管理ICT活用コンソーシアム」を設立。静岡県の農業法人が2019年度までの3年間、同実験に取り組む。

ICT水管理システム
ICT水管理システム
(出所:IIJ)
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 ICT水管理システムは、従来人手に頼っていた水田の水位調節をIoT技術で遠隔化、自動化するもの。水田に水位センサ―や温度センサーを設置し、それらのデータを無線経由でIIJのIoTプラットフォームに送る。農業法人の担当者はAPIを通じて水位や水温の変化を監視し、遠隔のPCなどから水田に設置した自動給水弁の開閉を指示できる。

 水田の各センサーや自動給水弁は電池で駆動し、センサーは量産時に1万円を切る価格を、自動給水弁は同4万円以下を目指すという。無線通信にはLPWAの一つであるRoLaWANを利用し、低消費電力ながら長距離通信を可能とした。IoTプラットフォームとLTEで通信する基地局を設置し、これが数百個のセンサーや自動給水弁を束ねる。

 IIJは同コンソーシアムの研究代表機関として開発の取りまとめやセンサーの開発、LoRaWAN基地局の設置やクラウドを含めたインフラの提供を実施する。2017年度中にはICT水管理システムの開発を終え、2018年の春に基地局やセンサーなどを水田へ設置し効果を検証する予定だ。

 IIJでネットワーク本部IoT基盤開発部長を務める齋藤透氏によると、農業法人における稲作の作業コストのうち、水管理は全体の約2割を占めるという。「ICT水管理システムの導入で、これを1割まで圧縮できる」(齋藤氏)。

IIJの齋藤透ネットワーク本部IoT基盤開発部長
IIJの齋藤透ネットワーク本部IoT基盤開発部長
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 同事業は、農林水産省の公募事業である平成28年度「革新的技術開発・緊急展開事業」の研究課題に採択されている。