ネットワーク機器メーカーのティーピーリンクジャパン(以下、TP-Link)は2017年6月12日、家庭向けWi-Fi機器の新製品「Deco M5」を発表した。6月22日に販売を開始する。複数台構成時に家全体へ安定したWi-Fi環境を届ける「オールカバーホームWi-Fiシステム」や、初期設定から管理までを一括で実施できるスマートフォン用アプリ「Decoアプリ」、セキュリティ機能「TP-Link HomeCare」などの特徴を持つ。今回発売するのは3台入りのパッケージである。

ティーピーリンクジャパンの「Deco M5」
ティーピーリンクジャパンの「Deco M5」
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 オールカバーホームWi-Fiシステムは、複数台のDeco M5でTP-Link独自のメッシュネットワークを構成し、建物全体へWi-Fiの電波を届ける仕組み。Wi-Fiルーターと中継器を包括的に提供するイメージである。3台で最大420平方メートルの範囲にWi-Fi電波を届けられるとしている。

 「TP-Link ART」と呼ぶメッシュネットワークの中核技術により、Deco M5同士を5GHz帯と2.4GHz帯のどちらでつなぐかは機器側が自動的に決めるので管理者は意識する必要がない。端末の接続に用いる周波数帯も、Deco M5が自動的に決める。通信経路も、Deco M5が常に状況を見ながら最適化するという。

 またWi-Fi環境を管理するIEEE802.11k/802.11vに対応し、そこへ「APステアリング」と呼ぶ機能を加えていることで、端末は最もWi-Fiの信号が強いDeco M5を自動判別して接続できる。「アップルのiPhone 5以降、及び最新のAndroid端末の多くが対応している」(ディストリビューションマネージャーの木下裕介氏)。

 初期設定は、スマートフォンまたはタブレットから実行する。Bluetoothを有効にして専用の「deco」アプリをインストールし、アプリの指示にしたがってセットアップする。

 TP-link HomeCareは、トレンドマイクロが提供する技術で開発したセキュリティ機能で、Decoに接続する機器を脅威から守る。3年分のサブスクリプションが含まれている。トレンドマイクロの技術を利用したアンチウイルス機能を搭載しており、悪意あるサイトのブロックと侵入防止、感染した機器の隔離ができる。ペアレンタルコントロールも可能で、家族のプロファイルを作成してそれぞれにネット利用時間を制限したり、子供が閲覧したサイトや時間を確認したりできる。またQoS(Quality of Service)設定にも対応する。

 本体は丸まったデザインで、およそのサイズは直径12cm、高さ4cm。LEDは1つだけで、その色でデバイスの状況を把握できるようになっている。有線ポートを備えるが、ユーザビリティを考慮してLANポートとWANポートを意識せず使えるようになっている。またUSB Type-Cポートを備える。Wi-Fiは2.4GHz帯(IEEE 802.11 b/g/n)と5GHz帯(IEEE 802.11 a/n/ac)に対応し、通信速度は5GHz帯が最大867Mbps、2.4GHz帯が最大400Mbps。MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)をサポートしている。

 6月22日に販売を始めるのは3台セットで、市場想定価格は税込み3万3000円前後。1台は間もなく発売予定で、市場想定価格は1万2000円前後。

 同日開催された製品発表会で、木下氏は60GHz帯を使うIEEE 802.11ad対応製品についても言及した。TP-Linkは、アメリカで802.11adをサポートするルーターを出しており、ティーピーリンクジャパンでは国内で販売する可能性があると説明してきた。しかし802.11adに対応する子機が少ないことから、発売する可能性はなくなったと明らかにした。