欧州連合(EU)の独占禁止法当局である欧州委員会(EC)は現地時間2017年6月9日、米QualcommによるオランダNXP Semiconductors買収について、EU企業結合規則(EUMR)に基づく本格的な調査を開始したと発表した。

 ECは、同買収が半導体産業における価格の上昇、選択肢の減少、革新の妨害につながる可能性があると懸念し、調査実施を決定した。同買収が欧州競争法に違反していないか調べ、2017年10月17日までに承認の是非を判断する。

 Margrethe Vestager委員は、「半導体はあらゆる電子器機に使われているため、われわれはこれらデバイス上の半導体に依存している。調査によって、消費者が引き続き競争力のある価格で安全かつ革新的な製品を手に入れる恩恵を受けられることを確かめたい」と説明した。

 Qualcommは、NXPを約470億ドルで買収することを2016年10月に正式発表した(過去プレスリリース)。2017年末までに買収手続きを完了する見込み。ECには2017年4月28日に報告している。

 Qualcommはモバイル向け無線チップで強力な地位を築いたが、スマートフォン市場の成長減速などによる影響を受け、投資家らのプレッシャーが高まっている。同社はNXP買収によって、自動車やIoT産業といった急成長が期待される分野での地歩を拡大したい考えだ。

 NXPは、オランダRoyal Philips傘下のPhilips Semiconductorsとして運営されていたが、2006年にプライベートエクィティの連合体に売却され、名称を変更。自動車用半導体サプライヤーの最大手とされ、NFCチップの主要サプライヤーでもある。

 なお、米連邦取引委員会(FTC)はQualcommのNXP買収を4月に承認しており、Qualcommは「EUの懸念を解消できる自信がある。われわれは徹底的な調査を受けることを予想していた」と述べた(英Financial Timesの報道)。

 これとは別に、Qualcommは半導体の販売およびライセンス供与において反競争的な手法を用いたとして、1月にFTCに提訴されている。排他的契約を結んでいたとされる米Appleからも、ライセンス料の過剰請求やリベートの未払いで訴訟を起こされ、これに対して「Appleは事実をねじ曲げている」と反論している。

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