ネット企業の経営者を中心とした招待制イベント「Infinity Ventures Summit(IVS)2017 Spring Kobe」が、2017年6月6日と7日の両日に開催された。2日目の朝には、恒例のスタートアップ企業によるピッチイベント「LaunchPad」が行われた。

写真●IVS2017 Spring Kobeで行われたLaunchPadの入賞者
写真●IVS2017 Spring Kobeで行われたLaunchPadの入賞者
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 今回登壇したスタートアップ企業は14社。ネイルサロン経営者が提案する小型装置、受付業務に長く携わった女性による業務効率化システムなど、起業家の実経験に基づいた課題解決型のプロダクトが多い。スペシャルコメンテーターとして参加した「ホリエモン」こと堀江貴文氏は、全ピッチ後の講評として「登壇者の8割に投資したい」と語るなど、レベルの高い競争となった。堀江氏は続けて「なぜ国内に閉じた取り組みなのか。レベルが高いだけにもったいない」として、海外へのオープン化に期待感を示した。

 14人の投資家や事業家による審査の結果、優勝を獲得したのは、クラスターが開発するVR(仮想現実感)イベントルーム「cluster.」だった。「多人数が集まる体験をハックする」をうたい文句とする同サービスは、創業者の3年間の引きこもり生活から生まれた。自宅や会社にいながらにして、VRゴーグルやパソコン経由で、ネット上で開催される仮想イベントに参加できる。アバターを使う同様のサービスは過去にもあったが、「数千人規模の参加が可能」(CEOの加藤直人氏)とするスケーラビリティが最大の特徴だ。チケット代の30%を収入として得る。既に、エイベックスグループなどとの連携も始まっている。今後は、スマホへも対応予定という。

 第2位は、BITが開発したオンライン対応のネイルプリンター「INAIL」。ネイルサロンを経営する創業者による製品である。プレゼンによると、ネイル市場は急成長しているものの、利用する女性は3割にとどまるという。ネイルサービスを使わない理由は、時間がかかり、サービス料が高いこと。そうした不満に注目し、短時間・低価格でネイルサービスを実現できる製品を開発することにした。

 同装置を活用したいサービス事業者が必要なのは、初期導入費とプリンターカートリッジなどの消耗品費、そしてインターネットによるデータ配信料だ。最新のネイルアートのデータが定期的に配信される。この3月に市場投入、導入した都内のヘアサロンは、初月に粗利55万円を得て初期投資額を回収できたとする。今後は、製品の小型化・低価格化を図り、従来の美容業界だけでなく、コンビニや携帯電話ショップなどでも使ってもらうことを目指している。

 第3位は、タウンWiFiが提供する「タウンWiFi」。ログインなどの操作を省いて、「Wi-Fiのホットスポットに行くだけでつながる」ユーザー体験を提供する。設定した速度以下なら接続しない、送受信データを暗号化するといった設定も可能だ。

 既に、国内外の200万スポットで提供中で、月間の接続回数は6000万回に達しているという。今後は、8月にアジア、10月に欧州にもサービス地域を広げ、世界でどこでも利用できる環境の構築を目指す。短期間でサービス地域を広げられるのは「認証SDKのおかげ」という。ユーザーのアクセスログを解析して追加することで、次のユーザーが自動認識できるようにした。事業モデルとしては、「有料Wi-Fiの権利のアプリ内購入」「ホットスポットに入ったことを知らせるプッシュ広告」の2つを考えているとした。

 第4位は、外国人労働者を採用したい企業向けに、ビザ取得を支援するWebサービス「one visa」。開発企業はResidenceで、ペルー出身の創業者が友人の強制送還をきっかけに入国管理局に勤務。その経験を生かして開発に取り組んだサービスだ。

 ビザの取得や更新には、通常1週間から1カ月の時間を要するという。申請に必要な書類は平均18種類、窓口での待ち時間は平均4時間。代理申請も高額という現場を見ていたからこそ生まれたサービスである。今後はビザの情報を最大限活用した金融与信、人材紹介、不動産事業を視野に入れる。さらに、世界のビザをオンラインで申請・取得したいとした。

 第5位は、ハイパーエイトの「LION Project」。同サービスは、楽しく飲食したい男性と時間のある女性をマッチングさせる「キャバクラ版Uber」(同社)をうたう。2月からサービスを始めており、深夜2時前であれば95%がマッチングに至っているという。「会食エンターテインメント」という新しい市場を創造したいとした。