独立行政法人都市再生機構(UR)、環境エネルギー総合研究所(EER)、一般財団法人日本気象協会(JWA)、インターネットイニシアティブ(IIJ)、および中部電力は、2017年6月7日、温度や湿度の予測を基にAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングス)技術でエアコンを制御、省エネ運転させる共同研究に取り組むと発表した。第一段階として、URが所有する賃貸住宅のうち計100戸程度において、2017年10月から実証実験を予定する。

実証実験のイメージ図
実証実験のイメージ図
出典:インターネットイニシアティブ
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 各家庭の室内温度・湿度、電力量などから最適なエアコン稼働状況をモデル化し、温度や湿度の予測情報などと組み合わせてエアコンのオン・オフを制御することで、快適さを保ちながらも省エネを実現するという。モデル化にはEERの開発したソフトウエア「エアコン適正稼働モデル」を用いる。

 「気象予測に基づいたエアコン制御は恐らく初めての試み。実証実験では、各家庭が無理せず快適に省エネできる仕組みをつくる」(EER)。

 「エアコン適正稼働モデル」は現在開発中で、仕組みは以下のようになっている。まず、室内の温度・湿度や、家全体の消費電力量、エアコンの消費電力量などのデータを、エアコンに設置した電源タップ型のIoT機器からクラウド上のサーバーへ収集する。2週間程度このデータを集めると、各家庭における暑さ、寒さの感じ方やライフスタイル、エアコンの稼働状況をモデリングできるという。

電源タップ型のIoT機器のモックアップ
電源タップ型のIoT機器のモックアップ
出典:環境エネルギー総合研究所
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 モデルと気象予測のデータを基に、各家庭に最適なエアコン稼働を分析。クラウドサーバーからIoT機器に指令を出し、赤外線通信でエアコンを制御する。これにより、家庭ごとに快適な温度かつ省エネ運転を可能にする。

 「それぞれの住宅の断熱状況や築年数などにもよるが、おおまかに見て15%省エネになると見込んでいる」(EER)という。

 なぜ省エネにつながるのか。例えば夏期では、まだ耐えられる室温の間はエアコンをつけず、暑さに耐えられなくなってからエアコンをつける家庭が多いという。「暑い時にエアコンをつけると高負荷運転となり、エネルギーを大量消費する」(EER)。

 モデリングに基づいて、家庭が「暑い」と感じる前にエアコンをオンにすることで、小さい負荷で稼働させる。これにより省エネ運転が可能になるという。

 URの賃貸住宅での実証実験については、首都圏・中部圏の計100戸程度で、2017年10月頃から2018年10月頃までを予定している。共同研究の実施期間は2017年6月から2019年3月までの予定。

 共同研究に参加する各団体・企業の役割分担としては、URはモニター住宅の要件整理、EERはAIを活用した収集データの分析と評価やエアコン運用手法の提供を担当する。JWAは気象データを提供し、IIJはIoT機器から収集した情報を蓄積するためのクラウドサーバーを構築する。中部電力は事業全体を統括し、省エネ技術を提供する。