公正取引委員会は2017年6月6日、データの公正な流通や活用を促進する考え方や判断の参考例を公表した。一部の企業が支配的な立場を利用して他社から不当にデータを得たり、データを囲い込んで市場競争を妨げたりする行為が独占禁止法にあたる可能性を示した。健全な競争を維持する目的から、大量のデータを持つ企業同士の合併を公正取引委員会が審査する場合もある。

 公取委の木尾修文経済調査室長は、IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)の普及によって、「データの公正な流通が企業の健全な競争を促すために重要になる」と述べた。AIを使った自動運転技術などの開発には、大量のデータが必要になることを念頭に置いたものだ。

公正取引委員会の木尾修文経済調査室長
公正取引委員会の木尾修文経済調査室長
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 データ市場においてこれまで不明確だった独占禁止法の適用に向けた考えを示した。不当なデータ収集の例としては、立場の強い企業が提携関係にある企業に対して一方的にデータを要求したり、SNSサービスを提供する企業が利用者に対して不当に個人データを要求したりする場合を挙げる。

 海外の事例では、ドイツ連邦カルテル庁が2016年に米フェイスブックに対して不当性に関する調査を実施した例がある。個人情報を提供しない利用者に対してサービスを利用できなくするなど、フェイスブックが市場の地位を乱用している疑いがあると判断したという。

 公取委は大量のデータを扱う企業同士が合併する場合に介入する可能性についても言及した。企業同士の合併によって市場の競争環境が弱まり、データ価格の高止まりといった弊害が発生する恐れがないか審査する。SNSのような無料サービスも「市場」とみなして、独占禁止法を適用する場合があるとする。