2017年6月6日、ベトナムのグエン・スアン・フック首相と日本企業との懇談会が開催された。製造、金融、物流、情報通信などの大手企業を中心に約40社が出席。フック首相は、「特にIT産業とハイテク農業の分野での参入を期待している」と語り、IT関連領域で日越の結びつきを強めたい考えを示した。

ベトナムのグエン・スアン・フック首相(中)。左はFPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長
ベトナムのグエン・スアン・フック首相(中)。左はFPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長
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 冒頭の挨拶に立ったフック首相は、「ベトナムと日本には深い絆がある」と強調。ベトナムにおいて日本は、最大の政府開発援助(ODA)供与国であると同時に、第2位の投資国、第4位の貿易相手国であることを挙げた。その上で、「両国は、新たな経済協力の時代を迎えるだろう」と述べた。

 投資を呼び込みたい分野が、ITをはじめとするハイテク産業だ。同分野では、日本企業による進出や事業拡大だけでなく、人材交流や育成にも期待している。「現在、IT人材が30万人は不足している。人材育成での連携をお願いしたい」(フック首相)。ベトナムはテクノロジーを活用して、農業の生産性を高める施策にも力を注いでおり、同分野でも日本企業の協力を得たいという。

 ベトナムのIT産業とハイテク農業を牽引するのが、同国のICT最大手であるFPTコーポレーションだ。同社はオフショア開発で日本企業とのつながりが強いほか、農業分野では富士通と協業している。

 富士通の山本正已会長は、「FPTとのコラボレーションを進めており、スマート農業の分野ではベトナム・ハノイにショールームを開設した。さらに発展させ、グローバルに展開したい」と語った。日立製作所の東原敏昭社長兼CEO(最高経営責任者)は、「鉄道であれば車両だけでなく信号設備や運行管理など、ITとプロダクトを組み合わせたアプローチを重視している。ベトナムで高度なインフラを提供する上では、デジタルに強い人材が欠かせない。一緒になって人材育成に取りみたい」とした。