産業技術総合研究所(産総研)は、エンルートと日立製作所、八千代エンジニヤリングと共同で、土砂災害時に地中に埋没した車両を空中から探査するシステムを開発した。産総研などが2017年6月5日に連名で発表した。

 産総研は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトにおいて、エンルートや日立製作所、八千代エンジニヤリングと共に土砂災害および火山災害時に無人航空機や無人車両を用いて地形調査や地質調査を実施する技術の開発を行っている。今回、新たに開発した埋没車両の空中探査システムは、同プロジェクトの成果物の一つである。

 同システムは、ドローンと地下電磁探査センサーで構成される。探査センサーをつり下げて安定航行するための技術と、より正確に埋没位置を特定するための様々なセンサー(地下電磁探査センサーや超音波距離センサー)により、自動飛行による網羅的な探査や手動操縦による精密な探査ができるという。

 産総研などは、実際に車両が埋設された静岡県内の実験場で検証実験を行い、地下1.5 mの土砂内の埋没車両の位置の特定に成功した。実験では、探査対象エリアを比較的粗い飛行間隔で網羅的に探査する広域探査と、それにより抽出された特定のエリアをより細かな飛行間隔で詳細に探査する精密探査の2種類の実験を実施した。

図●地中埋没車両探査の検証実験のイメージ
図●地中埋没車両探査の検証実験のイメージ
(出所:産業技術総合研究所)

 広域探査で測定したところ、浅部の埋没車両を僅かに把握できる程度だった。一方、精密探査では、浅部の埋没車両を明瞭に検出でき、深部の埋没車両も僅かながら検出できたという。

 産総研などは今後、斜面など実現場に近い環境下で適用可能性を探る実験を重ね、実用化を促進する。同システムを災害時に備えて普及させることで、人の立ち入りが困難な災害現場での救出活動の迅速化に貢献することを目指す。

 エンルートは国内最大手の産業用ドローン開発製造会社で、2016年7月からスカパーJSATグループの一員となっている。

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