シスコシステムズは2017年6月2日、「デジタル変革に向けたビジネスモデル」と題した説明会を開催した。同社はスイスのビジネススクールであるIMDと共同で、デジタル変革に関する研究と経営幹部向けワークショップを進めている。説明会ではその内容の要約を紹介した。

 「既存のトップ10社の4社は淘汰される。破壊が起こるまでの時間は3年だ」。デジタルディスラプター(デジタル変革による破壊者)や既存企業の経営幹部に対する調査結果を、シスコデジタイゼーションオフィス ディレクター 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のローレン・バッカルー氏はこう話した。「既存企業の41%は実際の脅威と考えているが、積極的に対応できているのは25%に過ぎない」(バッカルー氏)。

シスコデジタイゼーションオフィス ディレクター 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のローレン・バッカルー氏
シスコデジタイゼーションオフィス ディレクター 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のローレン・バッカルー氏
[画像のクリックで拡大表示]

 シスコやIMDはこうしたデジタル変革を「デジタルボルテックス」と表現する。「ボルテックスは渦巻きという意味の英語で、巻き込まれて中心に入るとバラバラにされてしまう」(IMD北東アジア代表の高津尚志氏)。バッカルー氏は「デジタルに収束し、バリューチェーンとして統合されていたものが分離していく。渦の中心では指数的に変化の速度が速くなり、最終的に無秩序になっていく。混沌として予測しようがなく、対応の俊敏さが重要になる」と説明する。

 例えば、米アマゾン・ドット・コムは広範な領域でデジタルディスラプターとなっているとした。具体的には、「メディア/エンターテイメント」「技術製品/サービス」「流通」「金融」「通信」「一般消費財」「製造」「運輸/物流」である。米ウーバーテクノロジーズは運輸/物流領域のタクシー業界に対する、強力なデジタルディスラプターである。

 デジタルディスラプターの特徴は三つある。安さで顧客を引きつける「価格の価値」、便利さで顧客を引きつける「経験の価値」、エコシステムの創出といった「プラットフォームの価値」を備え持つことだ。「価格や差別化による競争と比べ、プラットフォームによる競争は変化が急速なうえ、深い影響を及ぼす」。シスコデジタイゼーションオフィス マネージャー 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のジョエル・バルビエ氏はこう指摘する。

シスコデジタイゼーションオフィス マネージャー 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のジョエル・バルビエ氏
シスコデジタイゼーションオフィス マネージャー 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のジョエル・バルビエ氏
[画像のクリックで拡大表示]

 バルビエ氏はデジタル変革に必要は能力は三つあると解説する。環境の変化を検知する「ハイパーアウェアネス」、与えられた状況で最適な決断をする「情報に基づく意思決定」、素早く効果的に計画を実行する「迅速に実行」――である。