アクセンチュアは2017年5月25日、労働者の雇用や働き方に関する意識調査の結果を発表した。日本の労働者が人工知能(AI)やロボットといったテクノロジーの進展を脅威に感じている実態が明らかになった。

 調査は2016年11~12月に実施した。調査対象は1万527人。オーストラリア、ブラジル、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、トルコ、米国、英国の10カ国で実施した。

 「日本の労働者は10カ国の中で、最もテクノロジーの進展を脅威に感じている」。同日開いた報道関係者向けの説明会で、アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテクの高砂哲男マネジング・ディレクターは話した。

「今後5年間でテクノロジーの進展が仕事に与える変化をどう捉えているか?」という質問に対しての各国の回答。「脅威」と答えた労働者の割合は日本が最も大きい
「今後5年間でテクノロジーの進展が仕事に与える変化をどう捉えているか?」という質問に対しての各国の回答。「脅威」と答えた労働者の割合は日本が最も大きい
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アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテクの高砂哲男マネジング・ディレクター
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 「今後5年間でテクノロジーの進展が仕事に与える変化をどう捉えているか?」という質問に対して、日本は32%の回答者が「脅威」と回答した。10カ国の中で最も高い。割合が2番目に高かったフランスは23%だった。グローバルの平均は16%である。

 日本の労働者は、最新技術が普及する時代を見据えたスキルの習得について、具体的な行動に移せない傾向が強いという。「新たなスキルを学ぶために、今後半年の間、個人の時間を割ける状態になっているか?」という質問に対して、日本の回答者の37%が「なっていない」と回答したという。2番目に高かったのはフランスで27%。グローバルの平均は15%だった。

日本の労働者は、最新技術が普及する時代にを見据えたスキルの習得について、具体的な行動に移せない傾向が強い
日本の労働者は、最新技術が普及する時代にを見据えたスキルの習得について、具体的な行動に移せない傾向が強い
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 このほかの調査結果を見ると、各国の労働者の約8割が新たなスキルの獲得を重要視していることなどが明らかになった。

 アクセンチュアによると、日本では従来の雇用・働き方の前提が変化し始めている。AIやロボットの普及によって既存の仕事の一部が自動化される。人口減少や高齢化、労働者が働く期間の長期化、企業寿命の短縮、価値観の多様化なども要因だ。

 高砂マネジング・ディレクターは「労働者自身が持つスキルの生かし方や働き方を改善する必要がある」と訴える。例えば、労働者が転職やスキルアップなどを検討するとき、機械で代替できる部分とそうでない部分への分類が必要だとする。機械で代替できる部分の仕事の学習に使う労力は減らす。アクセンチュア 戦略コンサルティング本部の大崎邦彦マネジャーは「機械で代替できない部分の学習効率を高めるのにテクノロジーを使うべき」とした。

戦略コンサルティング本部の大崎邦彦マネジャー
戦略コンサルティング本部の大崎邦彦マネジャー
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