日本音楽著作権協会の浅石道夫理事長は、2018年1月からの実施を検討している音楽教室からの著作権使用料の徴収について「来年1月でできると思っている」と語り、予定通り実施する考えを改めて表明した。一方で音楽教室を運営する各社との交渉については「書面での反応はあったが、全く没交渉で一切話していない」と、具体的な交渉は進んでいないとした。2017年5月24日に開催した定例会見で明らかにした。

JASRACのいではく会長(左)と浅石道夫理事長(右)
JASRACのいではく会長(左)と浅石道夫理事長(右)
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 JASRACが検討しているのは、音楽教室での練習中に演奏する楽曲に対し、著作権の支分権の一つである演奏権に基づく著作権使用料を徴収するというもの。文化庁に使用料規程を届け出たうえで、2018年1月から管理対象に加える意向を示している。一方、ヤマハ音楽振興会など音楽教室側は強く反発しており、音楽教室を運営する300社超が共同で「音楽教育を守る会」を結成したほか、7月にも各社がJASRACを相手取り、支払い義務がないことを確認するため提訴することを検討している。

 浅石理事長は会見で、音楽教室運営各社との交渉について「文書で『(演奏権について定めた)著作権法22条に当たらない』と回答してくる例はあったが、テーブルに着いて話しているということは全くない」と語り、音楽教室運営各社と具体的な交渉が進んでいるケースはないことを示した。そのうえで「JASRACはいつでもテーブルに着く。『守る会』に全ての音楽教室運営会社が加盟しているわけではないし、『守る会』は(交渉の)窓口ではないとも言っている。一つひとつの音楽教室運営会社と話していけば(徴収に向けた契約締結が)できると思っている」と話した。

 音楽教室運営各社が訴訟を検討していることについては「あくまで報道レベルで見聞きしているだけで、各社から実際にそう言われたり文書で通知されたりしてはいない。私たちは話し合いのなかで解決したいと思っている」とコメントした。浅石理事長はさらに「(音楽教室の利用事例と類似する)ダンス教室との訴訟は最高裁判決でJASRACの主張が認められており、法的な整理は既に済んでいると認識している」と語り、仮に法廷闘争になっても音楽教室での楽曲利用が著作権使用料の徴収対象として認められることに自信を示した。

 京都大学がボブ・ディラン氏の楽曲の歌詞を含む入学式式辞をWebサイトへ掲載したことに対し、JASRACが京大へ問い合わせたことについては「歌詞をWebサイトに掲載する際に京大としてどのような見解をお持ちかを確認した。JASRACは通常業務としてそういう問い合わせをしており特別なものではない。掲載した歌詞が引用の範囲内だと判断すれば著作権使用料は請求しない。今回の京大の例も引用だと判断している」と明らかにした。

 今回の会見では、徴収した著作権使用料の分配の仕組みについて解説。2016年度はJASRACが管理する370万曲の約6割に当たる211万曲が著作権使用料の分配対象になったこと、サンプリング調査に基づく分配は金額ベースで1.98%にとどまり、残りの98.02%は利用者から利用した全曲の報告を受けて分配する「センサス分配」方式となっていること、NHKや民放各局からはキューシートの提供を受け、利用楽曲を秒単位で集計して使用料を分配していること、などを説明した。

 JASRACの定例会見でこうした説明がされるのは異例で、インターネット上で「利用楽曲はサンプリング調査で集計しているのでは」「利用されたのに使用料が分配されない楽曲があるのでは」といった疑問が出されていることを踏まえて説明したものとみられる。