テンプホールディングスは2017年5月24日、人事関連の業務にITを活用する「HR(Human Resource)テック」の動向に関する説明会を開催した。同社傘下のベンチャーキャピタルであるTemp Innovation Fundの加藤丈幸氏(代表パートナー)が、国内外のさまざまなHRテック関連ツールやサービスを紹介(写真)。これらを積極的に活用することで、「生産性の向上や多様な働き方が可能になり、働き方改革につながる」と加藤氏は主張した。

写真●Temp Innovation Fundの加藤丈幸氏
写真●Temp Innovation Fundの加藤丈幸氏
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 説明会で加藤氏は、HRテックの対象となる人事関連業務の課題は大きく四つに分けられるとした。具体的には(1)生産性向上、(2)多様な働き方の実現、(3)ミスマッチの解消、(4)従業員エンゲージメント(会社への愛着、満足感)の強化である。

 四つの課題のうち、加藤氏が説明に最も時間を割いたのは、(3)のミスマッチの解消である。従業員の適性と、担当する業務内容にミスマッチがあれば、業務効率は上がりにくい。この状態のままでは働き方改革の足を引っ張るというわけだ。

 こうした問題意識の下、米国の先進的な企業では「人事部門にデータサイエンティストを起用する動きが増えている」と加藤氏は話す。人事関連のデータを分析し、従業員の適性に合う業務を探るといったHRテックの施策に取り組むためだ。

 実際、人事関連データの分析を支援するツールも増えている。例として加藤氏は、米Cangradeを例に挙げた。同社のツールを利用すると、営業業務のパフォーマンス予測などの分析が容易になるという。

 このほか、(1)の生産性向上については、人事関連の業務ごとに特化したクラウドサービスが多数登場しているという。例えば勤怠管理や、人事管理業務に役立つタレントマネジメントのクラウドサービスなどだ。(2)の多様な働き方の実現という観点では、スマートデバイスを活用し、時間や場所の制約を取り払って働くことを支援するサービスに注目すべきとした。

Slackのやり取りからネガティブ従業員を発見

 また、(4)の従業員エンゲージメントの強化は、離職率の高さに悩む米国企業では、特に注目度が高い分野という。日本国内でも同分野のツールが増えつつある。その例として、チャットツール「Slack」のやり取りを基に従業員の感情を診断するボット「A;」を開発したLaboratikなどを加藤氏は紹介した。

 加藤氏によると、四つの課題のうち日本企業がHRテックの活用が比較的進んでいるのは、(4)の従業員エンゲージメントの強化。一方、(1)~(3)の課題については「問題意識を持つ一部の企業とそれ以外の企業とで、取り組みに差が広がっている」(加藤氏)。働き方改革を推進する上では、IT投資が重要であるという意識改革が多くの企業に求められると警鐘を鳴らした。