NTT東日本は、Wi-Fiを利用した農業・畜産IoTのトライアルを2017年5月23日に2件発表した。

 農業IoTのトライアルは、農業生産法人のサラダボウルおよび、同社関連会社で山梨県北杜市に国内最大級の園芸施設を保有、トマトの生産・販売を行うアグリビジョンと組み、農業法人の生産性向上に向けた取り組みを行う。

 一般に、トマトの収穫においては圃場の一部から試験的に収穫した結果を基に、栽培責任者が全体の収穫量を予測し、収穫量予測に応じた農作業計画を立てる。実証実験では、Wi-FiやAIによる映像データ解析などの技術を活用し、トマトの収穫量予測を行う。これにより人的ノウハウに頼らず、安定的で正確な収穫予想の実現を図る。

 具体的には、ネットワークカメラで撮影したトマトの映像データを、Wi-Fi経由でクラウドにアップロードし、AIを用いた画像解析技術によって収穫可能なトマトを識別することで、ビニールハウス内における当該品種の収穫量を予測する。栽培責任者の稼動削減と、農作業者の配置の最適化、取引先へのより正確な出荷数の通知の実現を行う。

図1●実証実験のイメージ
図1●実証実験のイメージ
(発表資料から、以下同)
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 Wi-Fiとビーコンを活用した農作業者の生産活動の可視化も行う。具体的には、ビニールハウス内に設置される電波ビーコンが発する電波を、農作業者が身につけるビーコンゲートウエイで受信し、その電波強度情報をWi-Fi経由でクラウドにアップロードする。このデータを、AIを用いた位置情報解析技術によって分析することで、農作業者の生産活動を可視化する。

図2●実証実験のイメージ
図2●実証実験のイメージ
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 畜産IoTのトライアルは、全国畜産農業協同組合連合会(全畜連)とコンピューター総合研究所 (CAL)と組み、栃木県那須塩原市で共同実証実験を実施する。

 仕入れた子牛を肉用牛として出荷可能な状態まで育てる途中、夜間など転倒に気付かずにそのままの状態で放置すると、肺が圧迫され死んでしまうことがある。全畜連は、毎年1~2%発生する出荷前の肉用牛の転倒事故死によって生じる大きな損失(約100万円/頭)を重要な課題として、肉用牛の転倒事故死防止方法を模索してきたという。

 実証実験は、全畜連の子会社で肉用牛や豚の生産を行うぜんちく那須山麓牧場で実施する。

 牛舎に設置した赤外線モーションセンサーで取得した画像データをWi-Fi経由で収集し、長距離の無線通信が可能なミリ波ネットワークを利用して、クラウドにアップロードする。蓄積した画像データを利用して、肉用牛の転倒状態の解析を行う。転倒検知時には畜産農家のスマートフォンやタブレット端末などへ通知して転倒事故死の防止を図る。

図3●実証実験のイメージ
図3●実証実験のイメージ
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 NTT東日本は、両実験を通じて、農業分野および畜産分野における簡単に利用可能なレディメイド型のIoTサービスの商品化を目指す。2017年5月24日~26日に東京ビックサイトで開催されている「ワイヤレスIoT EXPO」で展示している。

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